不織布とは
不織布とは、織ったり編んだりせずに繊維を結合させたシート状の布素材です。
一般的な布地である織物は、タテ糸とヨコ糸を交互に織ることで製造します。一方、不織布は織らない布であり、繊維そのものを直接シート状に形成する点が特徴です。ポリエステルといった化学繊維やコットンなどの天然繊維同士を様々な方法で結合させます。
主な結合方法として、熱で繊維を溶かして接着するサーマルボンド法や、針を刺して物理的に絡ませるニードルパンチ法などがあります。化学的な接着剤を用いるケミカルボンド法や高圧水流で繊維を絡ませるスパンレース法も採用されます。製造方法の選択によって、通気性や吸水性、柔軟性といった機能を意図的に付与できます。織物や編み物と比較して大量生産に適しており、コスト効率が良い点も産業用途で重視されます。
不織布の使用用途
不織布は以下のような用途で使用されます。
1. 医療・衛生
不織布は衛生面での利点から、医療・衛生用品に不可欠な素材です。使い捨てのサージカルマスクや医療用ガウンに活用します。また、キャップや手術用のシーツなどにも採用されます。おしりふきや除菌シートといった衛生・産業用資材の基材としても重要な役割を担います。
2. 産業・工業
産業分野では、流体から特定の粒子を分離するためのフィルターが代表的な用途です。エアフィルターや水処理フィルターとして活用されます。自動車産業においても、内装材や防音・吸音材、エンジンルームの断熱材など、目に見えない部分で多く採用されます。加工分野では研磨剤としても利用されます。
3. 土木・建築・農業
不織布はジオテキスタイルとして知られ、地盤の安定や排水のために用いられます。例えば、道路や堤防の補強材、遮水シートの保護材として活用します。建築用途では住宅の屋根や壁に使用される防水シートとして利用されます。農業分野でも保温性や通気性を活かした防草シートや、作物を霜や害虫から守るベタがけシートとして活躍します。