ガス吸着剤とは
ガス吸着剤とは、表面にある無数の微細穴で、特定のガスを分離・除去する機能を持つ多孔質材料です。
スポンジのように複雑な網目構造を内部に有する材料です。その表面積は、わずかな量でも大きいため、気体の分子を引き寄せて吸着できます。代表的なガス吸着剤として、ヤシ殻などを原料とする活性炭やゼオライト、水分の吸着が得意なシリカゲルなどがあげられます。除去したいガスの種類や目的に応じて使い分けます。
吸着の仕組みとして、分子同士が引き合う弱い力による物理吸着と、化学反応を伴う強い力による化学吸着の2種類があります。物理吸着は、温度や圧力を変えることで、吸着したガスを再び放出させます。吸着剤を再生させ、繰り返し使用することが可能です。一方で化学吸着は、特定のガスと強力に結合するため、ガスの除去能力に優れています。
ガス吸着剤の使用用途
ガス吸着剤は以下のような用途で使用されます。
1. 一般家庭
家庭用空気清浄機やエアコンフィルターに活用されます。これらの製品には、活性炭フィルターなどが組み込まれており、タバコや生ゴミといった生活臭の原因物質を吸着して取り除きます。また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドなどを除去する目的でも活用されます。その他、冷蔵庫内の脱臭剤など、ガス吸着剤の技術が身近な場面で役立ちます。
2. 産業
産業分野においては、半導体製造工程のガス精製などに活用されます。ガス吸着剤を用いて、原料ガスの微量な不純物を徹底的に除去します。また、空気から酸素と窒素を分離して、工業用や医療用ガスとしてそれぞれを利用する際にも、ゼオライトなどのガス吸着剤が活躍します。
3. 環境・エネルギー
環境問題への対策などにおいても、ガス吸着剤は重要な役割を担います。火力発電所や工場の排煙処理施設では、大気汚染の原因となる硫黄酸化物や窒素酸化物を除去するためにガス吸着剤を使用します。さらに、クリーンなエネルギーとして期待される水素や天然ガスを、安全かつ高密度に貯蔵するための材料としても研究開発が進められています。