隔膜電極

監修:有限会社サンコーテクニカ

隔膜電極とは

隔膜電極とは、電極表面がイオン交換膜などの半透膜で覆われた構造を持つ電極製品のことです。

この電極は、特定のイオンだけを透過させ、不要な物質を遮断する機能を備えており、イオンの選択的移動を制御する電気化学的な装置において欠かせない存在となっています。
特に、自動車や家電の塗装工程に広く用いられているカチオン電着塗装の分野では、この隔膜電極が重要な役割を果たしています。

カチオン電着塗装とは、塗料中のカチオン性樹脂 (正に帯電した塗料粒子) を金属表面に均一に吸着させる塗装技術です。このプロセスでは、塗装対象となる金属製品 (ワーク) が陰極となり、塗料槽内に設置された陽極が電極として機能します。ここで用いられるのが 、隔膜電極と呼ばれる特殊な電極です。

隔膜電極の使用用途

カチオン電着塗装は、自動車や電機部品などの金属表面に防錆性の高い塗膜を形成するために広く用いられています。その工程の中で、隔膜電極は、塗装品質の安定と工程の信頼性を支える重要な役割を担うものです。

1. pHの安定化と電着条件の維持

電着塗装では、陽極で電気分解が進行する中で、酸性物質が発生します。これらが塗料槽内に拡散すると、槽内のpHが下がりすぎてしまい、電着反応の進行に悪影響を及ぼしかねません。隔膜電極は、電極をイオン交換膜で覆う構造を持ち、酸性物質やアニオンを塗料槽から物理的に分離します。これにより、電着槽のpHを安定に保ち、塗装の均一性や密着性を維持することが可能です。

2. 副生成物の隔離と塗料の清浄性保持

陽極付近では、酸だけでなく金属イオンやその他の副生成物も発生します。これらが塗料に混入すると、塗膜に欠陥が生じたり、塗料そのものが劣化したりする原因になります。隔膜電極は、これらの副生成物を電極の外に漏らさず、塗料との接触を防ぐ役割を果たすものです。その結果、塗料の清浄性が保たれ、製品ごとの仕上がりのばらつきも抑えられます。

本記事は隔膜電極を製造・販売する有限会社サンコーテクニカ様に監修を頂きました。

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