オイルフェンス

オイルフェンスとは

オイルフェンスとは、水面に浮かぶ油をせき止める器具です。

漂流する油は風や波に乗って短時間で広がり、大きな環境被害を招きます。オイルフェンスはその広がりを物理的に遮断し、回収作業を容易にする役割を担います。帯状の浮体部とその下に垂れ下がるスカート部で構成され、浮体部が油をせき止め、スカート部が油の潜り込みを抑制します。

素材には耐油性に優れた合成ゴムやポリ塩化ビニルが用いられ、海水や紫外線にも強い設計です。長さは現場の規模に応じて連結でき、収納時は巻き取って保管できます。構造が比較的簡素で、緊急性の高い現場でも迅速な対応が可能です。油吸着マットや油回収船と併用することで、効率的な除去作業が行えます。環境保全の観点から、油流出対策の第一線を支える基本装備と言えます。

オイルフェンスの使用用途

オイルフェンスは以下のような用途で使用されます。

1. 港湾・河川

港や河川では座礁事故や船舶からの燃料漏れが発生すると、大量の油が拡散します。オイルフェンスを迅速に展張することで、漏れた油を一定区域に閉じ込め、周囲の生態系や漁業への被害拡大を防止することが可能です。消防・海上保安機関は常備品として配備し、訓練を通じて即応力を維持しています。

2. 工場・発電所

石油製品を扱うプラントや発電所の貯油タンク周辺では、雨水排水路に油膜が流出しないよう日常的な管理が欠かせません。常設型の低層オイルフェンスを排水溝に設置すれば、微量の油でも確実に捕捉できます。定期点検の際にフェンスを巻き上げ、堆積した油やゴミを除去することで、長期的な運用が可能です。

3. 海上工事

洋上風力基礎の建設やタンカーへの積み替え作業では、作業中のオイルや作業船からの燃料滴下が懸念されます。あらかじめ作業区域を囲う形でオイルフェンスを展張しておけば、万一の漏えいに対し即時に回収することが可能です。予防的に設置することで、環境リスクを最小化するとともに、作業者の安心感も高まります。