破砕ポンプとは
破砕ポンプとは、下水や産業排水に含まれる固形物を細かく砕きながら液体と一緒に移送するポンプです。
一般的な遠心ポンプは紙くずや繊維が混じる流体を扱うと内部で詰まりやすく、連続運転が難しくなります。破砕ポンプは羽根車の前段に配置したカッターリングが回転し、流入したごみを数ミリ以下に裁断する仕組みです。これにより、配管途中で固形物が絡まるリスクを抑え、設備を停止せずに処理を続けられます。
また、揚程など基本仕様は通常のポンプと同じ考え方で表されるため、水中型や据置き型など設置形式を選んで導入することが可能です。カッター部は耐摩耗鋼や硬質合金で作られることが多く、分解整備が短時間で行える構造です。近年はインバータ制御による可変速運転で処理量の変動や省エネにも対応する製品が増加しています。
破砕ポンプの使用用途
破砕ポンプは以下のような用途で使用されます。
1. 公共下水・し尿処理
都市のポンプ場や浄化センターには紙おむつやウェットシート、ビニール片などの固形物が流入します。スクリーンで全量を除去すると設備が大型化するため、破砕ポンプで細かく刻んでから送水し、沈殿池や膜処理装置の負荷を下げます。破砕により配管内閉塞が減り、緊急対応要員の出動回数を抑制することが可能です。
2. 食品・厨房排水
野菜くずや肉片を含む排水は粘度が高く、一般ポンプでは羽根車裏面に付着して性能が急低下します。破砕ポンプは食材を数ミリに粉砕し水と均一化して搬送できるため、悪臭や害虫の発生を抑制することが可能です。また、牛乳や濃厚ソースなど流動性の低い液体も固形物と同時に処理でき、多品種製造の食品工場でライン切替時の洗浄水量削減につながります。
3. バイオマス・有機肥料
家畜ふん尿や植物残渣を発酵槽へ送る際、藁や砂が混ざるとポンプ故障の原因になります。破砕ポンプは繊維質を短く切断して流動性を高めることが可能です。これにより、バイオマス発電プラントや有機肥料の製造プラントにおいて、稼働率向上と維持費削減を実現します。