監修:ウェルドビジョン合同会社
溶接カメラとは
溶接カメラは、溶接部を高解像度でリアルタイムに観察・記録する装置です。
溶接作業中のアーク光は肉眼ではまぶしく、また飛散するスパッタが視界を遮るため、詳細な状態を確認しにくい傾向にあります。溶接カメラなら、アーク光の輝度差を抑えながら高速撮影することが可能です。耐熱ハウジングや防塵ガラスを付属することが多く、スパッタや溶接ヒュームが飛ぶ過酷な環境でも長時間運用することが可能です。
撮影された映像はモニターへ送信され、作業者が遮光面を外したまま安全に溶融形状や凝固の進行状況を確認できます。さらに、溶接速度や溶け込み深さを数値化して品質管理へ活かすことも容易です。近年はAIベースの欠陥検出システムも存在し、クラックの兆候などを自動で検知する機能も搭載されています。
溶接カメラの使用用途
溶接カメラは以下のような用途で使用されます。
1. 新人教育
溶接カメラは溶接技能伝承教育の現場で活用されています。初心者は遮光面越しに手元を見ながら溶接姿勢を学ぶ必要がありますが、溶接カメラの映像を大型ディスプレイに映せば、指導者の運棒や溶融池の状態をリアルタイムに確認できます。映像を繰り返し再生することで、ビード形状の良否やトーチ角度の違いなどを視覚的に比較でき、習熟時間を短縮できます。
2. 製造現場
溶接カメラは、生産ラインでのリアルタイム溶接制御 (倣い制御) 、品質監視にも用いられます。溶接ロボット・台車の近傍に溶接カメラを設置し、遠隔で溶接線のずれをモニタリングすることでマニュアル制御または画像処理による自動制御を行うことが可能です。また倣いずれ、アークの乱れなど設定値から外れた挙動を検知した場合は即座にアラームを出し、ロボットを停止させることで不良品の流出を防ぎます。
3. 研究・開発
溶接カメラは研究開発分野での溶接現象解析に欠かせません。レーザー溶接ではキーホールの生成・崩壊をマイクロ秒単位で記録することで、エネルギー吸収率や蒸発圧の挙動を解析できます。またアーク溶接では溶接カメラから得られた高速動画から最適なパルス波形やシールドガス条件、あるいは溶接欠陥が発生する原因を探索する手がかりになります。
本記事は溶接カメラを製造・販売するウェルドビジョン合同会社様に監修を頂きました。
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