焼ならし

焼ならしとは

焼ならしとは、変態点よりも高い温度で加熱して空冷することで、内部組織の均一化や機械的性質の改善を図るために行われる熱処理です。

空冷時に結晶が微細化するため、材料が持っている本来の強度を発揮できるようになります。焼ならしをすることで、内部組織が微細化および均一化し、強度が向上します。

焼ならしは、鋳造や圧延などによって生じた内部のゆがみを取り除くために行われます。JISでも焼ならしが規定されており、加工記号は「HNR」です。基本的には、オーステナイト化温度を超える温度に加熱して再結晶や内部組織の粗粒化を起こし、その後空冷して微細化します。

似た言葉に「焼なまし」がありますが、目的が異なります。焼なましは、鋼を軟らかくする効果があり、加工しやすくするために実施されます。

焼ならしの使用用途

焼ならしは、金属の機械的特性を向上させるために行われます。ここでは、焼ならしの用途と得られるメリットを2つ解説します。

1. 鋳造品の内部応力除去

鋳造工程で製造された部品は、冷却時に残留応力が生じることがあります。残留応力が生じている状態では、材料が持っている本来の強度を発揮できません。焼ならしをすることで、内部に残留した応力を除去し、強度を高めることができます。具体的には、引っ張り強さや延び、衝撃値などの改善が図れます。これらの性質を改善し、高品質な製品を製造するためにも、焼ならしは有効です。

しかし、焼ならしの空冷による残留応力は生じるため、2度焼ならしする場合もあります。また、応力を除去するための焼なましを行うこともあります。

2. 金属の機械的性質の改善

圧延加工された金属は、硬さにばらつきが生じることがあります。焼ならしを実施することで、粗大化した組織が微細になり、機械的性質が改善します。これにより、機械部品や構造材としての性能が向上し、製造後の加工がしやすくなります。切削性が向上するため、加工しやすい材料に仕上げることが可能です。