BAWフィルタ

BAWフィルタとは

BAWフィルタとは、バルク音響波 (Bulk Acoustic Wave) を用いて特定の周波数帯域の電気信号を通過させる電子部品です。

圧電体の厚み方向に振動を発生させ、その共振を利用して高周波数帯域でのフィルタリングを実現する部品で、特に5G通信機器などの高周波回路で使用されています。

BAWフィルタは2つの電極の間に圧電体材料を挟んだ構造を持ち、入力された電気信号によって圧電体内部に音響波を発生させます。この音響波は圧電体内部を伝搬し、材料の厚みによって決まる特定の周波数で共振を起こします。この共振周波数付近の信号のみを通過させることで、不要な周波数成分を除去することが可能です。BAWフィルタは従来のSAWフィルタ (Surface Acoustic Wave Filter) と比較して、より高い周波数帯域での動作が可能という特徴があります。また温度による特性変化が小さく、高い信頼性を持つことから、スマートフォンなどの移動体通信機器に広く採用されています。

BAWフィルタの使用用途

1. 移動体通信分野での活用

スマートフォンやタブレットなどの通信機器では複数の無線通信規格に対応する必要があり、それぞれの周波数帯域に応じたフィルタが必要となります。BAWフィルタは特に2 GHzを超える高周波帯域で優れた特性を示すため、5G通信などの高周波無線通信システムに適しています。

2. IoTデバイスでの利用

IoT機器の無線通信モジュールでも、BAWフィルタは重要な役割を果たしています。複数の無線通信規格が混在する環境で、互いに干渉することなく安定した通信を実現するために使用されます。

3. 自動車産業における応用

自動車の無線通信システムでも採用が進んでいます。車載通信機器では、エンジンなどから発生するノイズの影響を受けやすい環境での動作が求められるため、BAWフィルタの高い耐ノイズ性能が活かされています。

4. 通信インフラへの実装

基地局などのインフラ設備においても、BAWフィルタは送受信回路の重要な構成要素として使用されています。基地局では高出力での動作が求められますが、BAWフィルタは高い電力耐性を持つためこの用途に適しています。