水系架橋剤

水系架橋剤とは

架橋剤のイメージ

図1. 架橋剤のイメージ

水系架橋剤とは、架橋剤のうち水溶性を呈するものです。

架橋剤はポリマー同士を連結することにより、物理的ないし化学的性質を変化させる化学物質です。主に塗料などに添加されます。また、硬化材料として用いられる場合もあります。

水系架橋剤の使用用途

1. 塗料

水系架橋剤の代表的な用途は、塗料への添加です。一般に塗料は、溶剤揮発による物理的な乾燥や化学的な硬化によって成膜します。

ここに架橋剤を添加することで、塗膜中に三次元の網目構造が生じます。架橋剤の添加により、以下の効果を得ることができます。

  • 基材との密着性の向上
  • 塗膜の耐水性の向上
  • 塗膜の耐溶剤性の向上

そのほか、乾燥や硬化時間の短縮なども利点の1つです。

2. 水系硬化材料

水系架橋剤とは、硬化材料としても用いられる物質です。各種材料へのコーティング剤、各種硬化性組成物の架橋剤などとして、フィルム、膜、医療用器具・材料、光学材料、記録材料や、電子材料、印刷版材料などに用いられます。

医療用材料としては、ナノコンポジットゲル、環動ゲル、生体分子応答性ゲル、DDS用刺激応答ゲルなどの架橋剤などの用途があります。水系硬化材料として、親水性の膜、吸水性ゲルの架橋剤、水性インクの架橋剤にも使用されています。

水系架橋剤の性質

水系架橋剤として用いられる化学物質には、多くの種類がありますが、どの分子も反応性の高い官能基部分と、水溶性を高める親水性構造から構成されます。

性質としては、塗膜の硬さや柔軟性、耐熱性、耐候性といった種々の塗膜性能を向上させることが必要です。さらに、着色や臭気、揮発性、毒性がないことや安価であることも求められます。

1. アクリル基

アクリル基の重合反応 (1)

図2. アクリル基の重合反応

アクリル基を有する水系架橋剤では、ラジカル重合によって架橋反応を起こすことが可能です。重合開始剤の存在において光照射または加熱を行うことで、ラジカル、カチオンが発生して重合反応が進行します。分子内に複数のアクリル基を有する架橋剤は、ラジカル重合を繰り返すことで3次元の網目構造を形成します。

また、アクリル基は求核剤となる化学種と反応して、マイケル付加反応を起こします。2価以上のアミンやチオールを用いることで、3次元架橋体の形成が可能です。形成された架橋剤は高分子となり、溶媒に不溶となります。

2. イソシアネート基

イソシアネートとアミン (上) 及び アルコール (下) の架橋反応

図3. イソシアネートとアミン (上) 及び アルコール (下) の架橋反応

水系架橋剤の中には、イソシアネート基を利用しているものもあります。イソシアネート基は、-N=C=Oという構造を有する置換基です。窒素原子と酸素原子の間に挟まれた炭素原子は電子不足となっており、ここへ求核剤が付加しやすい性質があります。

イソシアネート基を利用した水系架橋剤の中には、保管時に反応が進行しないよう反応性の高いイソシアネート基をマスキングして安定化しているものもあります。このような製品では加熱処理によりブロック剤が解離するようになっており、使用時にはイソシアネート基が再生する仕組みです。

3. その他

その他の水系架橋剤では、ヒドロキシ基やオキセタン基などを用いたものがあります。これらは、イソシアネート基およびカルボキシル基との反応が期待できる置換基です。

また、アジリジンはカルボキシル基との反応して共有結合を形成するため、架橋剤に用いられます。ただし、アジリジンは、変異原性を示すため、注意が必要です。その他の常温架橋では、ダイアセトンアクリルアミド (DAAM) とヒドラジド基を有する架橋剤であるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)との反応があります。

この反応は、脱水とともにADHの両側の末端にDAAMのケトン性カルボニル基が結合して、常温環境下において自己架橋します。

水系架橋剤の種類

水系架橋剤には、前述の通り様々な種類の化学物質があり、用いられている架橋反応もそれぞれ異なります。反応点となる官能基は、アクリルアミド基、イソシアネート基、アジリジン基、オキセタン基、チオール基などです。

それぞれの物質によって異なる用途が設定されています。自己重合するものや光照射や加熱が必要であるもの、常温でも硬化可能なものなど、種類はさまざまです。自分の用途に合わせて適切なものを選択する必要があります。

参考文献
https://specchem-wako.fujifilm.com/jp/water-based-curing-materials/acrylamide-monomers.htm

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