医療用音叉とは
医療用音叉とは、主に耳鼻科や神経内科、整形外科などの診療で使用される、特定の周波数を発生させるための金属製の道具です。
音叉を振動させて音を発生させ、その音や振動を患者に感じてもらうことで、聴覚や神経機能、振動感覚の異常を評価します。音叉は、特定の周波数 (一般的に128Hzや256Hzなど) を正確に出すことができるため、検査の再現性が高く、簡便で正確な診断が可能です。金属製で耐久性が高く、軽量で持ち運びしやすい点も特徴です。
医療用音叉の使用用途
医療用音叉の主な使用用途は以下の通りです。
1. 聴覚検査
音叉は、難聴や耳の異常を評価するための基本的なツールとして使用されます。以下のような検査が行われます。
リンネ検査
音叉を振動させた後、耳の外 (空気伝導) と耳の後ろの骨 (骨伝導) に当てて、どちらで音がより聞こえるかを比較します。空気伝導が骨伝導よりも弱い場合、伝音難聴が疑われます。
ウェーバー検査
振動する音叉を患者の頭頂部や前額部に当て、音が左右どちらに偏って聞こえるかを確認します。音が偏る場合、伝音難聴や感音難聴の可能性を評価します。
2. 神経機能の評価
音叉の振動を患者の皮膚や骨に当て、神経系や感覚の状態を評価します。以下の検査が行われます。
振動覚の評価
足や手の骨に音叉を当てて、振動をどの程度感じることができるかを確認します。糖尿病性ニューロパチー、末梢神経障害、または脊髄疾患などが原因で振動覚が低下している場合があります。
深部感覚の検査
振動感覚の消失や鈍化が見られる場合、末梢神経障害や脊髄障害の可能性を評価します。特に、糖尿病やビタミン欠乏症、椎間板ヘルニアなどの疾患がある場合に有効です。
3. 整形外科の評価
骨折が疑われる場合、音叉の振動を骨に当て、その反応を観察します。骨折箇所に振動を伝えると痛みが生じるため、骨折の位置を簡易的に特定する手段として使用されることがあります。
4. 内耳疾患の評価
音叉を使って内耳や聴覚神経の異常を調べることができます。感音難聴やメニエール病など、内耳の機能異常の初期診断に役立ちます。
5. 振動療法のサポート
振動が持つリラクゼーション効果を利用して、リハビリや筋肉の緊張緩和、疼痛管理に応用される場合もあります。音叉の特定の周波数が筋肉や神経に心地よい刺激を与えることがあります。