監修:プロトマニュファクチュアリング株式会社
X線残留応力測定装置とは
X線残留応力測定装置とは、材料に存在する残留応力を非破壊的に測定するための装置です。
X線回折技術を利用して応力を測定します。特に金属や合金、一部のセラミックスなどの構造材料において広く用いられる技術です。X線が材料の結晶 (格子面) に対してピークを収集し応力を算出し、そこから得られるデータを基に残留応力を計算します。
非破壊で測定が可能なため、材料や構造物に物理的な損傷を与えることなく、材料を評価することが可能です。また、X線回折法を利用することで応力を測定でき、熱処理や機械加工、塑性加工等の加工前後の残留応力の変化を数値として測定できます。
X線残留応力測定装置の使用用途
X線残留応力測定装置は様々な用途で使用されます。以下はその一例です。
1. 自動車産業
自動車産業においては、車両の安全性と耐久性が重視されます。特にエンジンやサスペンションなどの重要な部品に対して、残留応力測定を実施することが多いです。製造過程での応力の分布を把握し、部品の強度を確認できます。
また、製造後の品質チェックや疲労試験の結果を検証する際にも、残留応力のデータが役立ちます。設計に対するフィードバックを得て、製造プロセスを改善する手助けとなります。
2. 鉄道産業
鉄道産業では、鉄道車両やレールの部品は長期間使用するため、耐久性が極めて重要です。残留応力測定を通じて、部品の安全性を評価し、潜在的な疲労や破損のリスクを見積もることができます。
特にレールや車輪の部品は定期的な測定を行い、運行中の応力状況を把握することで、事故防止やメンテナンス計画を策定します。
3. エネルギー産業
エネルギー産業では、発電所のタービンや大口径配管など、高温高圧環境で動作する機器が多いです。これらの部品の残留応力を測定することで、疲労や破損のリスクを評価し、部品の信頼性を確保することが可能です。
特にタービンのブレードなどにおいては残留応力の分布を確認することで、故障予防やメンテナンスに活かすことができます。
X線残留応力測定装置の原理
X線残留応力測定装置は、材料に存在する残留応力を非破壊的に測定するための装置です。その基本的な原理はX線回折法に基づいています。
まず、X線が試料に照射されると、X線照射域の結晶構造にある格子面に対してX線が入射します。このときX線は特定の角度で散乱され、その散乱光が干渉を起こします。干渉のパターンは結晶内の原子配置や距離に依存しており、これを利用して残留応力を測定する仕組みです。結晶には、無応力の距離があり、d=0と表され、その距離より長い時は引張り応力になり、逆に短い時は圧縮応力となります。
X線残留応力測定のメリットは、非破壊かつ高精度で、様々な材料を測定することが可能な点です。
安全を担保しなければならない部品における材料特性の評価を行う際、重要な役割を果たしています。さらに、非破壊である為、特定の部位に焦点を当てて繰り返し測定することが可能で、局所的に応力状態を把握することができます。
X線は、測定箇所の表面から10数μm程度しか浸透しないと言われており、測定箇所の極表層を測定します。
X線応力測定装置の選び方
X線応力測定装置を選ぶ際は、以下を考慮して選定することを推奨します。
1. 焦点距離
Sin^2Psi法において測定距離は、測定装置のデザインによって異なり、定められた距離があります。この距離を守って測定する必要があります。
Cosα法については、Sin^2Psi法よりは焦点距離の設定が比較的緩いとされています。しかし、全く無視すると測定に影響を及ぼすとされています。
2. 測定時間
測定時間は、データを取得するために必要な時間を指します。短時間で測定が完了する装置は生産ラインなどでの使用に適しています。一方で、長い測定時間が必要な装置はより高精度のデータを提供できる場合もあるため、用途に応じて選定することが重要です。下記に説明する検出器の種類や測定方法により異なります。
3. 検出器の種類
0次元検出器:回折されたX線を「点」で検出する為、検出器の位置を動かしながらピーク (山) の裾野から反対の裾野までを収集し、X線の入射角を変えていくつかのピークを収集してきます。Sin^2Psi法を基に計算していく事が多いです。
1次元検出器:2θの任意の一部分を回折されたX線を「線」で検出する事が可能です。ピークの裾野から反対の裾野まで一度に収集が可能な為、X線の入射角を変えてより多くのピークを収集していきます。Sin^2Psi法を基に計算していく事が多いです。
2次元検出器:回折されたX線 (デバイ環) を一度に「360度」検出する事が可能です。Cosα法を基に応力を計算していく事が多いです。
4. 電源
電源には単相交流電源や3相交流電源が使用されます。単相交流電源は単相100Vや200Vが使用され、小型から大型の機器に多く採用されます。3相200Vなどの3相交流電源は主に大型の機器に採用されることが多いです。
5. 材質とX線管球
材質とX線管球には相性があり、管球のターゲット (波長) と材質は対になっています。
しかしながら、材料に対しX線管は複数対応する事が多くあります。一例ですが、アルミニウムは、Cr管球 (ブラグ角156.31°) やCu管球 (ブラグ角137度) においてピークが出現します。この様にピークが出現するブラグ角の位置は異なりますので、その位置に検出器を移動させる必要があります。但しCosα法の装置は、この限りではなく、2次元検出器の大きさにより、デバイ環を検出できるかに因ります。
状況により異なる場合があるため、詳細は各メーカへお問い合わせる事をお勧めします。
本記事はX線残留応力測定装置を製造・販売するプロトマニュファクチュアリング株式会社様に監修を頂きました。
プロトマニュファクチュアリング株式会社の会社概要はこちら