監修:株式会社リンテック
気化器とは
気化器とは、液体状態(液相)の物質を気体状態(気相)に変えるための装置です。
様々な工業プロセスや半導体プロセスでは、水や各種工業用液体・液化ガスを、高精度に流量制御された蒸気 (気化ガス) に変換する必要があります。このような場合に使用されるのが気化器です。 キャリアガスと混合して液化ガスの分圧比率を下げて安定的な気化供給を行うキャリアガス気化器や、キャリアガスを使用しないノンキャリア気化器などがあります。
気化器の使用用途
気化器は、様々な産業用途、工業用途などにおいて、水蒸気を発生させたり、各種液体・液化ガスを蒸気へ変換する用途で使用されています。
- 水蒸気供給/加湿
- 化学蒸着(CVD、ALD)
- 薄膜を蒸着することで、熱特性、光学特性、強度特性を高める
- 真空ポリマー膜蒸着用のモノマー気化
- キャリブレーション用蒸気の生成
- 液化炭化水素、液化LNGなどの気化
気化器の原理
1. 概要
気化器は、液体の温度を上昇させる(蒸気圧を上げる)、またはキャリアガスに溶け込ませることで、各種液体を気体へと変えます。
2. 直接気化方式
直接気化方式の気化器は、液体マスフローと組み合わせる事で、液体の気化量を物理的に制御する気化方式です。従来のバブリング方式では温度、圧力、表面積等の多くのパラメーターを高精度で制御しなければ気化量の安定が出来ませんでした。直接気化方式は気化室の一次側で液体・気体の量を制御することで気化量をコントロールする方式です。
- 気化室直前に気化量を液体マスフローで流量制御
- 気化室に連続的に液体を導入
- 気化室で瞬間気化
0.01g/minの微小流量制御が可能な液体マスフローと気化器を組み合わせる事で、微小流量から大流量まで様々な気化条件をコントロールする事が可能です。
また、制御部が全て常温の為、温度の制約を受けません。その為、最新の半導体プロセスで必要とされる高沸点材料の気化制御が可能です。
3. キャブレター
エンジンへの燃料供給装置である気化器は、キャブレターと呼ばれています。エンジンに吸入される空気の流れのベンチュリ効果を利用し、燃料の微粒化と吸入空気との混合により気化を促進させる仕組みです。
4. 気化器選び方
直接気化方式の気化器は気化量の正確なコントロールが求められる半導体製造プロセスや、燃料電池、水素や炭化水素の合成評価で使用されます。
気化器の選定には液体の物性(沸点・蒸気圧曲線・粘性・反応性)と気化条件(供給温度・気化器二次圧・キャリアガス量)に合わせた気化器の材質、構造の選定が必要です。
また、気化効率の悪い気化器の場合、未気化やメンテナンス頻度の増加につながります。
高効率な気化器のアプローチとして、ミスト径を小さくし表面積を拡大する事で高濃度でも瞬間気化を実現する等があります。
また、半導体装置プロセスで使用される気化器には以下のような要件が求められます。
- 高い気化効率:液体材料を効率よく気化させることが重要です。これにより、材料の無駄を減らし、プロセスのコストを削減できます。
- 安定した流量制御:気化したガスの流量を精密に制御することで、成膜やエッチングの品質を向上させます。
- 温度と圧力の制御:気化プロセス中の温度と圧力を正確に制御することで、材料の分解や不純物の発生を防ぎます。
- 大流量対応:特に最新の半導体プロセスでは、大口径ウエハーに対応するために大流量の気化が求められます。
- 低温度気化:材料によっては低温での気化が必要となるため、低温度での気化能力も重要です。
- キャリアガスの使用量削減:キャリアガスの使用量を減らすことで、コスト削減と環境負荷の低減が図れます。
気化器の種類
気化器には、用途に合わせて様々な製品があります。キャブレターは燃料を気化させてエンジンなどへ供給する製品であり、単純気化器や、空気ブリード付き気化器などの種類があります。
炭酸ガス蒸発器やLNG気化器などは、熱交換により液化ガスを気化する装置です。LNG気化器には、12℃前後の冷水を利用する冷水式LNG気化器や、温水ボイラを用いる温水式LNG気化器、空気強制循環式LNG気化器などがあります。
冷水式LNG気化器はLNG冷熱の有効活用が可能です。また、空気強制循環式LNG気化器は気化器予備機、及び温水式気化器が不要でイニシャルコストが低いなど、それぞれに特徴があります。
半導体製造に使用されるTEOSなどのガスや水蒸気に使用できる産業用製品には、小型気化器、高効率気化器、高温高効率大流量気化器などがあり、キャリアガス気化器とノンキャリア気化器に大別されます。用途に合わせて適切なものを選定することが必要です。
本記事は気化器を製造・販売する株式会社リンテック様に監修を頂きました。
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