リチウムグリース

リチウムグリースとはリチウムグリース

リチウムグリースとは、原料基油にステアリン酸リチウムやひまし油の硬化脂肪酸のリチウム塩を増稠剤として分散させた、石けん系の潤滑剤のことです。

かつては、耐水性のあるカルシウムグリースと耐熱性のあるナトリウムグリースが使い分けられていましたが、1938年に耐水性・耐熱性ともに優れたリチウムグリースが開発されて以降、万能グリースとして幅広い分野において使用されています。

リチウムグリースは、高温条件下で利用するために開発されたアルミニウムコンプレックスグリースや非石けん系のウレアグリースとも比較されます。 

リチウムグリースの使用用途

リチウムグリースに限らず、グリースは自動車、家電、工作機械などのベアリングをスムーズに潤滑させ、磨耗を防ぐために使用されています。

中でもリチウムグリースは万能グリースとも呼ばれ、汎用的に用いられるため、ホームセンターなどでも多く取り扱われています。万能ではあるものの、使用の際には耐熱温度、耐水性、ちょう度、せん断安定性などを確認し、適したグリースを選択しなければなりません。また、他の種類のグリースと混合させると、性能が低下するおそれがあるので注意が必要です。

リチウムグリースの製造方法

基油に増稠剤を溶解させ、アルカリ水溶液を加えます。増稠剤の量は一般的には基油に対して5-20%程度です。この溶液を加熱撹拌させることでケン化反応が進み、石けんが生成されます。石けんには、生成と同時に三次元網目構造(ミセル構造)を形成し、基油を取り込みます。形態はグリースの特徴である半固体形状です。

その後、モリブデンなどの必要な添加剤を混合させ、ミリング工程で石けん繊維の長さや太さを揃えて滑らかな状態にします。最後にリチウムグリース中の気泡を除去し、フィルターを通して異物を取り除いた後に充缶して完成です。

リチウムグリースの特徴

リチウムグリースの耐熱温度は約130℃です。耐水性・機械的安定性に優れますが、いずれも非石けん系のウレアグリースと比較して劣ります。しかし、ウレアグリースは高温下やせん断によって硬化・軟化するものがあり、選定には注意が必要なため、特異な用途でない限りリチウムグリースを用いるのが一般的です。低速から高速まで、幅広い回転速度での利用に適していることも特徴的と言えます。

リチウムコンプレックスグリースのその他情報

1. リチウムコンプレックスグリース

リチウムグリースの耐熱性を向上させたグリースとしてリチウムコンプレックスグリースがあります。リチウムコンプレックスグリースは増ちょう剤に、水酸化リチウムに脂肪酸と二塩基酸を反応させた石けんである複合リチウム石けんを用いたグリースです。

リチウムグリースと比較して、耐熱性が向上し、その他の性能も同等レベルです。耐熱性の面では、よく比較対象に挙げられるウレアグリースに近い性能があり、使用する箇所によってはウレアグリースを凌ぐ潤滑性能があります。

日本ではリチウムグリースの次にウレアグリースが多く生産されますが、海外ではリチウムコンプレックスグリースが第2位の地域もあります。リチウムグリース以上の性能が必要な場合、ウレアグリースだけではなくリチウムコンプレックスグリースも候補として考える必要があります。

2. リチウムグリースの基油による特性の違い

リチウムグリースとは増ちょう剤に由来する名称ですが、基油 (ベースオイル) によって特性は異なります。基油の種類は、大別して鉱物油と合成油、エーテルおよびフッ素系があり、合成油はジエステル油、シリコーン油、ポリグリコール油、炭化水素油、シリコーン油などが一般的です。ここではベアリングによく用いられるリチウムグリースの基油を例として紹介します。

  • 鉱物油
    鉱物油は最も一般的な基油です。安価なため流通量も多く、小売店では鉱油系のリチウムグリースが多く扱われています。潤滑性能は標準的で、耐熱性と酸化安定性は合成油と比べて劣ります。ゴムや樹脂への攻撃性はやや認められるレベルです。
  • エステル油
    エステル油は鉱物油と比べて潤滑性、耐熱性、低温性が優れています。このため、エステル系のリチウムグリースは幅広い温度範囲で高速運転に適したグリースです。ゴムや樹脂への攻撃性が高いため使用箇所周辺のオイルシールなどの部品材質を確認する必要があります。
  • シリコーン油
    シリコーン油を基油としたリチウムグリースはエステル油系リチウムグリースよりもさらに耐熱性および低温性が高く、より広い温度範囲で使用できるグリースです。ゴムや樹脂への攻撃性が低く、使用箇所周辺への影響が少ない特徴もあります。ただし、鋼対鋼の境界潤滑性が低いため高荷重での使用はできません。

参考文献
https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/tec/pdf/16D1.pdf
https://www.kyodoyushi.co.jp/knowledge/grease/category/
http://www.jalos.jp/jalos/qa/articles/003-S28.htm
https://www.eneos.co.jp/company/rd/technical_review/pdf/vol51_no02_09.pdf
https://koyo.jtekt.co.jp/support/bearing-knowledge/12-2000.html

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