監修:大阪電機工業株式会社
貫通金物とは
貫通金物とは、船舶の船体や防水を必要とする機械装置の筐体に穴を開ける際に使用される金属製の部品です。
一般的には装置側に穴を開け、その穴を通してケーブル、パイプ、または他の装置を通すために使用されます。適切に設置すると、水が漏れ出す・水の外部からの侵入を防ぐ役割を果たします。これにより、安全性が向上し、水の浸入による損害や沈没のリスクを軽減されることが可能です。
また、正しく設計された貫通金物は強度を保持し、穴を通るケーブルなどの安定性を確保します。耐久性が高く、長期間にわたって信頼性が高い点も特徴の一つです。
貫通金物の使用用途
貫通金物は主に船舶に対して適用されることが多いです。ケーブルや配管、排気口などを貫通させる際に使用します。
1. ケーブル
船舶では多くの電気ケーブルや通信ケーブルが船体を貫通し、船内の様々な部分に配線されています。貫通金物はこれらのケーブルを船体に通す際に使用されます。また、船舶の外部に線が行き来やセンサーを取り付ける場合、貫通金物を使用して船体を貫通しながら取り付けることが多いです。
2. 配管
船舶内において水道や排水、空調などの配管も必要です。これらの配管が船体を通過する際には、貫通金物が使用されます。漏れが発生しないように適切なシールと共に設置されることが多いです。
3. 通気孔・排気口
船舶内部は密閉された空間であり、適切な換気が行われないと湿気や臭い、さらには有害なガスが蓄積される可能性があります。通気孔や排気口は船内外の空気の循環を促進し、新鮮な空気を取り入れることで換気を改善するために設置されます。通気孔や排気口は船舶の適切な運用に不可欠であり、貫通金物を利用して開口する場合も多いです。
貫通金物の原理
貫通金物は一般的に金属製の円筒形部品です。船体や機械装置の筐体を通る穴に適合するように設計されており、内外の接続を可能にします。接続にはねじ込み方式やフランジ方式、溶接して接続する方式の製品が多いです。
フランジ方式の場合は、フランジを船体に固定するために使用されるボルトやナットも必要です。フランジの穴に挿入され、船体の内側と外側でボルト・ナットで締め付けます。これにより、貫通金物を船体にしっかりと取り付けることが可能です。
また、多くの場合、貫通金物が船体を貫通する穴周囲に防水・防漏のためのシールを設置することが多いです。シールはゴム製やシリコーン製の柔らかい素材で作られており、穴を通る装置と船体との間の水密性を確保します。
まとめると、貫通金物の原理は船体を貫通する穴を適切にシールし、装置を船内外で接続することで船舶の機能性や安全性を維持することにあります。正しく設置された貫通金物は水密性を確保し、船舶の構造の強度を維持しながら、必要な装置を効果的に取り付けることが可能です。
貫通金物の選び方
貫通金物を選ぶ際は、下記の選定要素を考量することが重要です。
1. 口径
貫通金物の口径は船体に開ける穴のサイズに対応している必要があります。適切な口径を選択することで、船体への貫通が適切に行われ、装置の取り付けをスムーズに行うことが可能です。口径は一般的にミリメートル単位で表されます。
2. 材質
貫通金物の材質は耐久性や耐食性、強度などに影響を与えます。一般的にはステンレス鋼や真鍮、アルミニウムなどの金属が使用されます。
真鍮は加工のしやすさ、入手のしやすさから主に使用され、さびにくい材質の一つとして良く使用される材質です。
ステンレス鋼は真鍮よりもさらに耐食性に優れており、海水環境下でも長期間使用可能です。アルミニウムは軽量で取り扱いが容易ですが、強度が低く圧力、応力がかかる場所での使用時には注意が必要です。また、他の金属との接触箇所では電位差から錆が進みやすくなるため、注意がより必要になります。
3. 取付方法
貫通金物の取付方法は、船体の材質や使用状況によって異なります。一般的な取付方法には、溶接やフランジ方式、ねじ込み方式などがあります。
溶接は船体と貫通金物を一体化させるため、強固な取り付けが可能ですが、交換が必要となる場合には修理作業が進めにくくなります。フランジ方式は貫通金物をボルトで固定する方法であり、取り外しや交換が比較的容易です。ねじ込み方式は貫通金物に施されたネジによって取り付ける方法であり、小口径の場合に適用されることが多いです。
貫通金物のその他情報
電線貫通金物の種類の一つに、JIS F 8801の舶用電線貫通金物 (英語名:ケーブルグランド) があげられます。
ねじ込み方式や溶接方式の貫通金物の一種ですが、規格が定められており、船以外でも使用される事が多いです。特に、一般的なのが舶用箱用電線貫通金物 (A形ケーブルグランド) と呼ばれるねじ込み式の貫通金物です。
船内の制御盤などの筐体にあけられたケーブル取込口 (接続用穴) に取り付け、筐体壁面を貫通しケーブルを貫通させるために使用され、防水機能の補完器具として使用されます。
これら船用電線貫通金物を使用することで制御盤や操作盤の筐体、機器内へ粉塵や水を侵入させることなく、また振動や引っ張られることでの抜け防止の役割も果たし、ケーブルを確実に固定し引き込みことができます。
JIS規格上で形状・サイズが定められており、7φから96φまで幅広い太さのケーブルに対応出来るようにサイズ規格が定められている。陸上用電線から船舶用電線まで大小様々な電線に対応出来ることも特徴の1つです。
名前の通り、船用の製品ですが、一般の電気製品で防水が求められる製品に使用されるケースもあり、制御盤以外にモーター、電車、発電所、海水が直接かかりうる機械装置のケーブル取り込み口にも採用実績があります。
JIS F8801 舶用電線貫通金物を構成する部品
( ) 内は通称を記載
JIS F 8801の規格番号 | パーツ (JIS F 8801内の正式名称) | 別名 | 主な材質 |
1 | 締付グランド | 頭 | 真鍮、アルミニウム、ステンレス、樹脂 |
2 | ボディ | 本体、体 | 真鍮、アルミニウム、ステンレス、鉄、樹脂 |
3 | ナット | 真鍮、アルミニウム、ステンレス、鉄。但し、C形グランド (溶接用) では使用されない | |
4 | 座金 | リーフ、ワッシャー | 鉄、真鍮、アルミニウム、ステンレス |
5 | ガスケット | パッキン | 合成ゴム、シリコン |
6 | ガスケット | ハンプ | 合成ゴム (黒色) 、貼り合わせ白布 |
8 | 保護板 | 盲板 | 鉄 (締付グランド、本体が他の材質であっても、保護板は鉄が使用されるケースが多い) ケーブルを通す際に捨てるパーツにあたる。 |
部品交換時に、JIS F 8801記載の番号で指定をされるケースもあります。
本記事は貫通金物を製造・販売する大阪電機工業株式会社様に監修を頂きました。
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