転写フィルム

監修:株式会社アイセロ

転写フィルムとは

転写フィルムとは、写真、イラスト、幾何学模様、電子回路パターンなどの画像を複写、転写するためのフィルムです。

最近では製品に付加価値を与えるために、電磁波シールド、保護膜などの機能を転写するフィルムもあります。

複写機や印刷機で使用される転写フィルムは、透明なベースフィルム上に感光層や保護層などの複数層がコーティングされており、光や熱などの刺激を受けることで画像を複写する仕組みです。これにより、鮮明でクリアな複写結果を得ることができます。

自動車や家電などの部品に画像を転写するフィルムは、ベースフィルム上に保護層や画像層、接着層が形成されており、射出成形を利用したインモールド成形、真空成形を利用したアウトモールド成形により部品表面に画像を転写することができます。

また、ポリエステルなどの透明プラスチックフィルム上に感光性樹脂層が塗工されたドライフィルムレジスト (DFR) は、プリント基板などへ電子回路パターンを形成するためのレジスト膜の転写に利用されています。

転写フィルムには、長期の保存や使用、耐久性が高く、経年劣化を抑えるために、画像を形成する層以外に、傷付き防止や紫外線劣化などを防ぐような保護層が形成されているものもあります。

転写フィルムの使用用途

転写フィルムには、以下のような使用用途があります。

1. 服飾

服飾デザインやテキスタイルデザインにおいて、転写フィルムを使用してパターンやデザインを転写することがあります。特に、複雑な模様やグラフィックを正確に転写する際に有利です。

また、Tシャツやスウェットシャツなどの衣料品にプリントを施す際に、転写フィルムが使用されます。特殊なインクジェット転写フィルムを使用することで、写真やイラストなどの複雑なデザインを衣料品に印刷することが可能です。これにより、デザインTシャツなどを大量に複製することができます。一般に熱転写フィルム、昇華転写フィルムが利用されています。

2. オフィス業務

オフィスでは契約書や報告書などの書類を複写する必要があります。転写フィルムを使用することで、これらの書類を効率的に複製することが可能です。ただし、近年では転写フィルムを使用せず、プリンタや複合機によって印刷することが多いです。複合機では熱転写フィルムによりインクが転写されます。

3. 工業製品

工業製品や製造品には、製品や部品に識別情報やラベル、ロゴを付ける必要があります。転写フィルムを使用して、プラスチック製品や金属製品、ガラス製品などの部品表面にバーコードやロゴ、デザインなどの情報が転写されています。

家電や自動車などの部品には、箔押しや射出成形、真空成形を用いた熱転写フィルム、三次元形状の部品には水圧転写フィルムによるデザイン転写、また、電子回路パターン作製のためのレジスト膜転写にはドライフィルムレジストが利用されています。

転写フィルムの原理

転写フィルムの原理は、転写方式により様々です。
例えば熱転写フィルムは、基本的にはベースフィルム上に離型層、インク層、接着層を設けた構成となり、熱と圧力を掛けることで、離型層から剥離したインク層が接着層を介して、部品等へ転写されます。

水溶性転写フィルムは、水溶性のベースフィルムと離型層で構成される転写フィルムで、水溶性ベースフィルム上に転写をしたいパターンや機能膜を塗工し、対象物へ貼り付けます。その後、離型層を剥がし、水溶性ベースフィルムをシャワーなどで水洗することで、パターンや機能膜を転写させます。また、単体では破壊されやすい薄膜の取り出しも、水溶性転写フィルムの原理を用いることで可能となります。

透明ベースフィルム上に感光層などの特殊なコーティングを施したドライフィルムレジストは、プリント基板上などに加圧しながら感光層を貼り付け、感光層を明暗のパターンが描画されたマスク (原版・マスタ・フォトマスク) 超しに露光 (焼き付け) 行い、その後、現像することで電子回路パターンの像を転写する仕組みです。

ベースフィルムは、転写フィルムの基本構造を提供する透明なフィルムです。ポリエステルやポリプロピレンなどのプラスチック素材で作られています。複写・転写の支持体として機能し、他の層を保護しつつ支持する役割を果たします。

離型層は、対象物へインク層を転写させる時に、温度等の転写条件でベースフィルムからインク層を剥離させるために設ける層です。ベースフィルムと離型層の間で剥離させるタイプと離型層とインク層の間で剥離させるタイプがあります。前者では離型層が転写後の保護層としての機能も備えています。離型層を設けず、ベースフィルムも含めて対象物へ転写する場合もあります。

インク層は、意匠性のデザイン、画像、機能材などが、有機・無機材料などから形成されたものです。グラビア、ダイコートなどのコーティング法、スクリーンやインクジェットなどの印刷法、蒸着・スパッタリング法などで形成されます。

接着層は光や熱などに感応のある層です。光や熱に反応する化学物質が含まれているため、熱や露光などによって化学的な変化を起こし、対象物への転写を可能にする層です。

保護層は転写された像を保護するための層です。フィルム全体を覆い、損傷や劣化から保護する役割を果たします。一般的には、耐摩耗性や耐候性の高いポリウレタンなどの材料で構成されます。

転写フィルムの選び方

転写フィルムを選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. 寸法

転写フィルムの寸法は、使用する機械の対応サイズと一致している必要があります。一般的な寸法にはA4などの国際規格サイズがありますが、特定の機器や用途に応じてカスタムサイズのフィルムも販売されています。roll-to-rollのプロセスでは、フィルムが長尺で巻かれたロールで購入する場合も多いです。

2. 解像度

解像度は転写される画像の鮮明度、精度等の機能を決定する重要な要素です。高解像度の転写フィルムを選ぶことで、細部の再現性が向上し、クリアで鮮明な複写結果を得ることができます。解像度はdpiで表されることも多いです。ドライフィルムレジストでは、現像後の線幅、ラインアンドスペース (L/S) 、ホールサイズで表現されます。

3. 耐久性

耐久性は、複写・転写物の製品保証を示す指標です。耐久性が高い転写フィルムは摩耗や汚れ、湿気などの外部要因から複写・転写物を保護し、長期間にわたって品質を維持します。特に厳しい環境下で使用する場合は、耐久性の高い製品を選択する必要があります。

本記事は転写フィルムを製造・販売する株式会社アイセロ様に監修を頂きました。

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