監修:株式会社ジェイエムエス
スタティックミキサーとは
スタティクスミキサーとは、駆動部のない静止型混合器です。
各種流体 (液体・気体・スラリーなど) に適用され、輸送配管のライン内に設置して使用されます。ラインミキサーと呼ばれることもあります。分散、溶解、乳化、反応などを効率よく行うことができ、食品や化学薬品、医薬品、半導体原料など幅広い分野で使用されている装置です。動力が不要であるため、省エネルギー化にも効果があります。
スタティックミキサーの使用用途
スタティクスミキサーは、食品・飲料、水処理、化学、医薬品、半導体など様々な分野で使用されている装置です。
1. 水処理
水処理分野では、スタティクスミキサーは下記の用途で使用されます。
- pH調整
- エアレーション
- 凝集剤混合
- 次亜塩素酸ナトリウムによる上水の滅菌
- 薬品の添加注入
2. 化学・製紙
化学分野では製品製造における混合希釈や、反応用途で主に使用されています。主な用途は下記の通りです。代表的な製造物では、水とアンモニアの混合物によるアンモニア水の製造があります。
- 原料の混合希釈 (ガスの混合・液体原料の希釈)
- 添加剤等の混合
- 原料・中間原料の加熱、冷却
- 樹脂の重合反応
- 均質化
- 温度均一化
- SCR脱硝設備の窒素酸化物の還元促進
また、紙製造・パルプにおいても化学分野と類縁の用途として、下記のような用途があります。
- 薬液の希釈
- 製紙用澱粉スラリーの糊化、直接加熱
- 温水の製造
- 塩素ガスによるパルプの漂白
- 次亜塩素酸カルシウムの製造
3. 食品
食品分野は、スタティクスミキサーの主要な用途の一つです。飲料、調味料や酒など、あらゆる流体に使用されています。具体的な用途には下記のようなものがあります。
- 原料クリームなどの混合
- 原料の直接加熱
- 加熱殺菌、冷却
- 洗浄用温水の製造
- 炭酸ガス等の吸収
4. 医薬品・化粧品
医薬品などの製造においても、前述の分野と同様に洗浄用温水の製造や原料の希釈混合などにスタティクスミキサーは用いられます。その他、特有の用途としては、
- 回収酵母の加熱失活
- ペースト、ジェルの加熱、冷却
があります。
5. 電子・半導体
電子半導体分野におけるスタティクスミキサーの主な用途は下記の通りです。基本的には、上述の分野と同様、希釈混合に用いられています。
- ガス混合
- 原料調合
- 粘度調整
- スラリー原料等の沈殿防止 (リチウムイオン電池など)
- 純水の加熱
スタティックミキサーの原理
スタティクスミキサーの配管内にはエレメントと呼ばれる、長方形の板を180度ねじった部品が挿入されており、スタティクスミキサー内に入った流体は、このエレメントにより転換・反転させられ、効果的に混合されます。エレメントには、ねじれの方向により、右エレメントと左エレメントがあります。
エレメント内の流体が混合されるメカニズムは下記の通りです。流体が回転・転換するため、動力が無いことが特徴です。
- 転換: エレメントのねじれに沿って管中央部から管壁へ、管壁から管中央部へと流れが転換します。
- 反転: 1エレメントごとに回転方向が替わり、慣性力の反転により乱流撹拌します。
構造がシンプルであることから内部の洗浄が容易です。また、可動部品が無いため、消耗部がほとんど無いことも特徴の1つと言えます。
スタティックミキサーの種類
混合攪拌するという基本機能はスタティックミキサーに共通ですが、直接加熱・熱交換・反応などのプロセスによって使用するスタティックミキサーの種類が異なります。
1.ケニックス型スタティックミキサー
捻じれた長方形の板をエレメントとして配管内部に組み込んだインライン式ミキサーです。注入流体を分割・転換・反転作用によって混合させます。
2.MES型スタティックミキサー
2種の混合エレメントを積層し、ブラインド板と中間板ではさんだ構造をしたインライン式ミキサーです。多層の混合エレメントで形成された複雑な経路を流れることで、分割・合流を繰り返すことにより、混合が促進されます。
3.JMSプレート型スタティックミキサー
プレート開口部の後方に形成されるカルマン渦によるかく乱効果を利用したインライン式ミキサーです。材料を注入する場合は混合板の出口で供給され、かく乱された流れによって混合させます。
本記事はスタティックミキサーを製造・販売する株式会社ジェイエムエス様に監修を頂きました。
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