SiCパワーモジュール

監修:Apex Microtechnology, Inc.

SiCパワーモジュールとは

SiCパワーモジュールとは、シリコンカーバイド (SiC) と呼ばれる素材を使用して作られたパワーエレクトロニクスデバイスです。

SiCはシリコンと炭素を複合して作られる半導体です。従来のシリコンベースのパワーデバイスと比較して、SiCパワーモジュールは高温や高電圧でも使用することができます。また、高周波での動作にも適してます。

高温で使用することができるため、冷却システムの要件を緩和し、システムの信頼性を向上させます。また、高電圧でも使用できるため、同じ出力を得るために必要な電流を低減することが可能です。スイッチング速度も速いため、導体損失やスイッチング損失が少なくなり、電力変換効率が向上します。

SiCパワーモジュールの使用用途

SiCパワーモジュールは様々な産業で使用されます。以下はその一例です。

1. 自動車

電気自動車やハイブリッド電気自動車などの電動車両において、SiCパワーモジュールが使用される場合があります。高い電圧耐性と高温耐性により、電動車両の変換回路や充電器などで広く使用されます。SiCパワーモジュールを使用することにより、高効率な電力変換を実現することが可能です。

2. 太陽光発電モジュール

太陽光発電モジュールでは、太陽光を電力に変換する際に発生する直流電力を交流電力に変換するインバータが必要です。SiCパワーモジュールを太陽光発電システムのインバータとして使用することが可能です。変換効率が高いため、発電システム全体の効率を向上させることができます。

3. 建設機械

建設機械も電動装置を使用されることが多いです。一例としては、油圧システムやモーター駆動のアクチュエーターなどに使用されます。これらの装置にSiCパワーモジュールを使用することで、燃費を改善させて機械の性能を向上させることが可能です。

4. 産業プロセス機械

産業プロセスにはポンプやファン・コンプレッサーが多く使用されており、インバータで駆動する場合もあります。これらの機械にSiCパワーモジュールを使用することで、高効率化が可能です。消費電力を削減することが可能であり、省エネルギーに寄与します。

SiCパワーモジュールの原理

SiCパワーモジュールは、SiCによるMOSFETやダイオードで構成されます。

SiCによるMOSFETは、ゲート電圧を制御することでチャネル内の電流を制御します。ゲートに電圧を印加することでチャネルの抵抗が急激に低下し、電流が流れる仕組みです。ゲートへの電圧印加を制御することで、主回路の電流の流れを制御することが可能です。

SiCによるダイオードは、従来のシリコンダイオードよりも高速かつ低損失で動作するダイオードです。電圧が順方向にかかると非常に低抵抗になり、電流が流れやすくなります。逆方向電圧による電流を遮断し、順方向のみに電流を流すことが可能です。

SiCパワーモジュールはこれらのパワーデバイスが組み合わせて構成されます。MOSFETは主にスイッチング操作に使用され、回路をオンとオフに制御します。一方、ダイオードは逆方向の電流を遮断する特性を活かして、回路の逆方向保護などの目的で使用されます。

SiCパワーモジュールの選び方

SiCパワーモジュールを選ぶ際は、以下の要素を考慮することが重要です。

1. 耐電圧

耐電圧はVDS (Drain-to-Source Voltage) などとも呼ばれ、回路が耐える電圧を示す指標です。耐電圧が高いほど、異常時に発生する電圧に耐えることができます。発生する最大の電圧に対応する耐電圧を選択します。

2. 定格電流

定格電流はモジュールが導通できる最大の電流値です。ドレインに流れる大際電流としてID (Drain Current)と表記される場合もあります。必要な最大電流を検討し、その値に対応可能なモジュールを選択します。

3. 損失電力

SiCパワーモジュールにおいて発生する損失も考慮することが重要です。一般的にパワーモジュールには多少の電力損失があり、熱として放熱されます。損失電力が少ないほど、電力回路として高効率に動作します。

本記事はSiCパワーモジュールを製造・販売するApex Microtechnology, Inc.様に監修を頂きました。

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