酸化ニッケル

酸化ニッケルとは

酸化ニッケルとは、暗緑色の粉末の無機化合物です。

酸化ニッケルは塩酸に溶けますが、水には溶けません。酸化ニッケルのCAS登録番号は1313-99-1で、国内法規上の適用として安衛法で「名称等を表示すべき危険物および有害物」「名称等を通知すべき危険物および有害物」「特定化学物質第2類物質」、「作業環境評価基準」(法第65条の2第1項)の指定がされています。

PRTR法で「特定第1種指定化学物質・特定第1種-No. 309」、水濁法で「指定物質」、大気汚染防止法で「有害大気汚染物質 (優先取組物質) 」にも指定されています。

酸化ニッケルの使用用途

ニッケルの持っている触媒としての活性を用いて、酸化ニッケルは広く利用されています。具体的には、油脂やその他有機化合物の水素添加触媒としてです。その理由として、水素によって酸化ニッケルが還元され、生成した微粒子状のニッケルの触媒作用が高いことが挙げられます。

さらに、酸化ニッケルは、電子管・特殊鋼の添加剤としての利用以外に、サーミスタ・P型半導体・フェライトといった電子材料の原料にも使われています。酸化ニッケルはガラスや陶磁器などの窯業分野で、着色剤として早くから使われていました。

その他、酸化ニッケルは、ニッケルめっきなどに使用されるニッケル塩の原料としても利用されています。

酸化ニッケルの性質

酸化ニッケルの分子量は74.69で、融点は1,960℃、密度は6.67g/cm3です。室温で反強磁性を示し、1.3BMほどの磁気モーメントを持っています。

酸化ニッケルは塩基性酸化物です。水にはほとんど不溶ですが、酸には溶解して、緑色の水和ニッケルイオンを生成します。しかし、加熱によって結晶化した酸化ニッケルは、酸に溶解しにくいです。

その一方で、酸化ニッケルはアルカリ水溶液にはほとんど溶解しません。ただし、アンモニア水には徐々に溶解して、淡青紫色のアンミン錯体が生成されます。また、酸化ニッケルを水素ガス中で加熱すると、還元されて金属ニッケルが生成します。

酸化ニッケルの構造

酸化ニッケル (II) の化学式はNiOです。ニッケルの酸化物には酸化ニッケル (II) の他に、酸化ニッケル (III) や酸化ニッケル (Ⅳ) などが報告されています。その中で酸化ニッケル (II) は、唯一詳細な構造が明らかになっているニッケル酸化物です。

酸化ニッケル (II) は、塩化ナトリウム型の構造を取っています。他の多くの二成分金属酸化物と同様に、しばしば、NiとOの比が1:1から外れた不定比化合物になります。

酸化ニッケルのその他情報

1. 酸化ニッケル (II) の合成方法

純度の高い酸化ニッケル (II) は、Ni(OH)2、Ni(NO3)2、NiCO3などのニッケル (II) 化合物を熱分解することで、緑色の粉末であるNiOとして得られます。

2. 酸化ニッケル (III) について

ニッケルの酸化物の一つである酸化ニッケル (III) は、空気中で硝酸ニッケル (Ⅱ) を300℃に熱すると得られますが、微量の水を含んでいます。酸化ニッケル (III) は灰黒色の粉末で、アルカリ蓄電池に使われています。

ただし酸化ニッケル (III) は、文献には記されているものの、はっきりと確認されていない化合物です。酸化ニッケル (III) は三酸化二ニッケルとも呼ばれ、しばしばNi2O3と書かれていますが、実際には不定比の酸化ニッケル (II) とも考えられています。

その一方で、Ni2O3はニッケルの表面に微量に存在する、もしくはニッケルの酸化の中間体であるという文献もあります。

3. 酸化ニッケル (Ⅳ) について

酸化ニッケル (Ⅳ) の化学式はNiO2で、二酸化ニッケルや過酸化ニッケルとも呼ばれています。酸化剤として使用されている緑灰色の粉末です。

酸化ニッケル (Ⅳ) は酸素が酸化ニッケル (Ⅱ) に吸着したものと言われていて、アルカリ性溶液中で水酸化ニッケルを次亜塩素酸塩などを用いて酸化すると得られます。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0114-0536JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_1313-99-1.html

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