アクリル樹脂系非水分散型塗料

アクリル樹脂系非水分散型塗料とは

アクリル樹脂系非水分散型塗料とは、塗料の成分であるアクリル樹脂を微粒子状にして有機溶媒に分散させた塗料です。

英語では「Non Aqueous Dispersion」なので、頭文字をとってNAD塗料と呼ばれています。その他にも、「非水分散型塗料」「非水エマルション塗料」と呼ばれる場合があります。

アクリル樹脂系非水分散型塗料の使用用途

アクリル樹脂系非水分散型塗料に通常使用される溶媒は、ミネラルスピリット (塗料用シンナー) を使用した弱溶剤タイプの塗料です。弱溶剤塗料はトルエンキシレン、ケトン、エステル系などの強溶剤に比べて、臭気がマイルドで、下地や旧塗膜を侵しにくいことから、外壁や屋根といった場所の塗り替え工事などで幅広く使用されています。

アクリル樹脂系非水分散型塗料は、外壁や屋根、コンクリート、モルタル、木材、金属などの建材に使用されます。耐候性や耐久性が高く、外部の環境に対して優れた防水性能を発揮します。

アクリル樹脂系非水分散型塗料の原理

アクリル樹脂系非水分散型塗料は、塗装後の乾燥過程で溶剤が蒸発することによって、分散されていた粒子が結合し、塗膜を形成することで塗料が固定されます。そのため、水を溶媒としている合成樹脂エマルションペイント(EP) に比べて、塗装素地への付着性や結露水などに対する耐水性が高いことが特徴です。

品質において、発色が良い点や塗替え用途においては旧塗膜の影響を受けにくい点、木部塗装においてはヤニやシミ止め性が良い点も長所の1つです。また、作業面においても、硬化性、特に初期硬化が良く、速乾性があるため、1日に2回塗りが可能であったり、乾燥に時間がかかる寒冷地でも使いやすいです。

効果性や速乾性の良さは、微粒子分散系の塗料であることが理由として挙げられます。塗工時に粘度が下がり、静置時に粘度が上がるチキソ性があるため、塗りやすくてタレにくくなっています。また、強溶剤を使用した溶剤系塗料に比べると臭気も穏やかと言えます。

ただし、デメリットとして、水系塗料と比較すると臭気が強い点や強溶剤系塗料と比較すると塗膜のツヤや強度は劣る点が挙げられます。

アクリル樹脂系非水分散型塗料の構造

アクリル樹脂系非水分散型塗料は、JIS K 5670にて規格などが定められています。JISによると、アクリル樹脂系非水分散型塗料とは、脂肪族炭化水素系の溶剤中で0.1μm~数μmの樹脂粒子を分散させた塗料であり、 ホルムアルデヒド系防腐剤、ユリア系樹脂、フェノール系樹脂及びメラミン系樹脂のいずれも含まないものが条件です。

アクリル樹脂系非水分散型塗料には、アクリル樹脂粒子と分散媒となるミネラルスピリットの他にも、着色成分である顔料、樹脂粒子や顔料を分散させる分散剤が含まれています。ミネラルスピリットとは、石油系炭化水素系の化合物の混合物で沸点が160~200℃程度であり、適度な乾燥性を有しているものです。塗料の希釈剤としても使用されています。

アクリル樹脂系非水分散型塗料のその他情報

アクリル樹脂粒子分散液の製造方法

アクリル樹脂系非水分散型塗料は、アクリル樹脂粒子が分散した塗料のベースが作られます。そこに顔料などの着色成分が添加されて、さまざまな色の製品が作られます。アクリル樹脂粒子が分散したベース塗料は、以下のような手順で作られます。

1. 原料準備
分散媒となるミネラルスピリットに分散剤を溶解させます。この分散剤は低分子系のものではなく、高分子系のものが主に用いられます。

2. 重合
分散剤を溶解させた分散媒に、アクリル樹脂の原料となるアクリルモノマーと開始剤を一括または滴下で添加していき、重合を開始します。この際に必要により加温します。アクリルモノマーと開始剤は分散媒中に溶解していますが、重合が進行し、高分子量化すると分散媒に対して不溶になるため、分散媒中に粒子として析出してきます。

粒子が析出してくると、分散剤が粒子表面に吸着して、粒子同士が集合、合一して粗大粒子になったりしないように保護したり、粒子が沈降しないように安定化させます。

3. 熟成
未反応のモノマーが残存しないように、必要により開始剤を追加したり、加温などを行います。

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