5相ステッピングモーター

5相ステッピングモーターとは

ステッピングモーターとは、パルス信号によって回転角度や回転速度を制御できるモーターであり、正確な位置決めが必要な際に使用されるモーターです。

ステッピングモーターの中でも、1パルスに対して動く角度が0.72°のものを5相ステッピングモーターと呼びます。

5相ステッピングモーターの使用用途

ステッピングモーターは、特に精密な位置決め精度が求められる機械に使用されます。

具体的には、FA用の機械、半導体やFPD (フラットパネルディスプレイ) 、太陽光パネル製造装置、分析機器、医療機器、精密ステージなどにおいて、特に高精度な制御が求められる部位などです。

5相ステッピングモーターの原理

ステッピングモーターは、一般的なモーターと同様に主に「ローター」と「ステーター」で構成されています。ただし、回転角度を高精度で制御するために、ローターやステーターには以下のような特長があります。

1. ローター

ステッピングモーターの内部にある回転子のことです。ローターは4つの部品で構成されています。2つのローター、マグネット、回転軸です。2つのローターの外周にはそれぞれ小歯 (こば) が50歯ずつあります。

小歯は等間隔なので、1ピッチは7.2°になります。このローターが互いに3.6°ずれた位置で組み合わされ、永久磁石を内包しています。この構造によって一方のローターがN極、もう一方のローターはS極に磁化されます。

2. ステーター

ステーターはローターの外側にある固定子であり、一般的なモータと同様に鉄芯に巻線が巻かれています。特に5相ステッピングモーターでは、ローターを挟んで対向する位置に1セットで「相」が構成されA相からE相まで、合計10個並んでいます。

それぞれの相の固定子にも小歯が設けられており、そのピッチは7.2°ピッチです。

5相ステッピングモーターの特徴

ステッピングモーターは、主に以下のような特長があります。

  • 小型で高トルクを発生させることができるため、頻繁に起動と停止が可能。
  • 停止している時でも保持力が発生するため、機械的なブレーキが無くても停止位置を保つことが可能。
  • 取付角寸法が同等のサーボモーターと比べ、より大きな慣性負荷を駆動することができる。

5相ステッピングモーターは、このような特長に加え、高精度での位置決めが可能なため、顕微鏡用のXYステージの駆動などに使用されています。

5相ステッピングモーターのその他情報

1. 5相ステッピングモーターの動作手順

  1. ステーターのA相に電流を流して、S極に励磁します。すると、N極に磁化されているローターの小歯がひきつけ合って停止します。この時隣のB相磁極の小歯と、もう一方のS極時磁化されているローターの小歯とのずれは0.72°です。
  2. 次にステーターのB相に電流を流し、N極に励磁します。するとB相磁極の小歯と、0.72°ずれていたローターの小歯が引きつけ合うので、7.2°だけ回転して停止します。

上記の動作を繰り返すことによって、ローターを7.2°ずつ回転させます。A相からB相、C相と次々に励磁するステーターの相を連続的に変化させます。制御用の電気信号は「電源のON/OFFの1サイクルを1パルス」とし、1パルスが入力されると、1ステップ角度  (5相の場合は0.72°) だけモーターの出力軸が回転します。

2. 5相ステッピングモータの配線

5相ステッピングモーターは、配線方法によってその特性が変わります。機器の設計に際しては、この配線方法を意識することで、その機器に適したコストと性能のバランスを得ることが可能です。配線方法には、スター結線やペンタゴン結線、新ペンタゴン結線があります。

3. 5相ステッピングモーターの制御

ステッピングモーターは、その回転速度を時間に応じて設定することでその特性を最大限に発揮します。回転速度を時間に応じて設定することを一般的には運転パターンと呼び、2通りのパターンがあります。

自起動運転パターン
モーターの回転速度を最初から最後まで同じ速度で動かす運転パターンです。速度と時間をグラフにすると、四角形 (矩形) になるため、矩形駆動と呼ばれます。

台形駆動運転パターン
モーターの回転速度を最初は遅く、徐々に高速にし、最大の速度で一定期間回転したあと、徐々に低速にもどして、停止する運転パターンです。速度と時間をグラフにすると台形になるため、台形駆動と呼ばれます。

モーターの回転速度は、下記の要素で決定されます。

  • 選んだモーターの特性
  • 動かしたい対象物の質量
  • 動かしたい対象物に加わる摩擦
  • モーターに加える電力
  • モーターの配線方法
  • モーターの励磁方法

特に急激に動かし、急激に止めたい用途で使用するときは、選んだモーターの特性、特にローターイナーシャが最重要となります。

4. 5相ステッピングモーターと2相ステッピングモーターの違い

5相ステッピングモーターは2相ステッピングモーターに対して、一般的には極端に高額になりますが、5相ステッピングモーターは、2相ステッピングモーターにより1ステップ (モーターへの回転指示の最小単位) あたりのモーターの回転角度を小さくでます。よって下記の特性が欲しいときは、5相ステッピングモーターが選ばれます。

  • 微小角度で回転させたいとき
  • 騒音を低くしたいとき

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/products/stepping/overview_1/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/webseminar/stkiso_2_1_2/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/webseminar/stkiso_2_2_1/
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/orien-sougou/book/orien-sougou-P0021.pdf

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