AD変換ボードとは
AD変換ボードとは、様々なアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を持ったボード (基板) のことです。
自然界のあらゆる現象はアナログ信号で取得されるため、数値計算やデジタル信号処理、制御などをする際は、AD変換ボードを使ってデジタル信号に変換する必要があります。AD変換ボードには組込用途に応じて、様々なインターフェースを持つ製品がリリースされています。
パソコン内蔵用のPCI-Expressや他の基板のドータカードとして接続するFMC、USBなどのインターフェースを持つ製品がリリースされています。
AD変換ボードの使用用途
AD変換ボードは、主に各種センサで取得されるアナログ信号をマイコンなどで処理するためにデジタル信号に変換する際に使用されます。
1. 測定・監視
AD変換ボードは、温度、圧力、光、音などの物理量をデジタル信号に変換するために使用されます。これにより、センサからの信号を取得し、測定や監視を行うことが可能です。例えば、工場での製品品質管理や、環境モニタリングなどが挙げられます。
2. データ収集・処理
AD変換ボードは、アナログ信号をデジタル信号に変換することにより、データを取得し、処理するために使用されます。例えば、医療機器での心電図信号の取得や、音声処理などが挙げられます。
3. 信号処理
AD変換ボードは、デジタル信号処理を行うために使用されます。例えば、音声のフィルタリングや、波形解析などが挙げられます。
AD変換ボードの原理
A/D変換は、以下のような標本化、量子化、符号化のステップでアナログ信号をデジタル信号に変換します。
1. 標本化 (英: Sampling)
連続な信号であるアナログ信号の振幅値を離散的な周期で切り出します。この時の周期を「サンプリング周期」と言い、記号としては主にTsで表します。計算式は下記の通りです。
サンプリング周期: Ts = 1/Fs (Fs: サンプリング周波数)
2. 量子化 (英: Quantization)
標本化によって離散的な周期 (サンプリング周期) で切り出された振幅値を、デジタル信号に変換できるように離散的な振幅値に近似します。この時、量子化によって生まれる誤差を「量子化誤差」と呼び、以下の式で表されます。
量子化誤差= (標本化した値) – (量子化した値)
入力された電圧を基準となる電圧と比較することで量子化を行います。比較するやり方によって、高精度な変換や高速なサンプリングが可能な方式があります。
3. 符号化 (英: Coding)
量子化によって近似した離散的な振幅値を0と1の2値で表す符号に変換します。
AD変換ボードの種類
AD変換ボードの種類はAD変換方式により区分されます。主要な方式は、以下の3種類です。
1. 逐次比較
逐次比較型のAD変換方式は、アナログ信号を電圧の比較によってデジタル信号に変換する方式です。アナログ信号を比較対象の電圧と比較して、次々にビットを決定していきます。
最大分解能は18ビット、最大サンプルレートは10MHz程度です。アンチエイリアシングフィルタが外付けで必要となります。
2. デルタシグマ
デルタシグマ型のAD変換方式は、アナログ信号をデジタル信号に変換するために、デルタシグマ変調技術を利用する方式です。最大分解能は32ビット程度で最も高分解能が得られる方式ですが、最大サンプリングレートは1MHz程度で低速です。
3. パイプライン
パイプライン型のAD変換方式は、アナログ信号をパイプライン構造の複数のステージに分割し、並列に処理することで高速な変換を実現する方式です。各ステージでアナログ信号をデジタル信号に変換し、次のステージに渡します。
最大サンプルレートは1GHzで、最大分解能は16ビット程度です。回路が複雑になるので、コストが高くなります。
AD変換ボードの選び方
1. 分解能
必要とされる分解能を持つAD変換ボードを選択します。例えば、フィードバック制御に使用する場合は、精度要求から決定します。
2. サンプリング周期
対象となる信号の周波数範囲によりサンプリング周期を決めます。理論上は周波数範囲の2倍のサンプリング周期が必要となりますが、実際には10倍必要と言われています。
3. 入力チャンネル数
AD変換ボードは、1チャンネルのものから数百チャンネルのものまで、さまざまな種類があります。測定する信号の数に応じて、必要な入力チャンネル数を選択する必要があります。
4. 入出力インターフェース
AD変換ボードは、USB、FMC、PCI Expressなどのインターフェースを持っていることが多いです。使用するインターフェースに合わせて、適切なインターフェースを選択する必要があります。
5. ソフトウェア
AD変換ボードには、測定用ソフトウェアが付属していることがあります。このソフトウェアは、データの収集、処理、表示、保存などの機能を提供するものです。使用する目的に合わせて、必要な機能を持ったソフトウェアがあるかどうかを確認する必要があります。
6. コスト
必要な精度、サンプリングレート、入力チャンネル数などに応じて、適切な価格帯のものを選択する必要があります。
参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/ad-converters/ad_what1
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/ad-converters/ad_what2