FIB-SEM

FIB-SEMとは

FIB-SEM (英:Focused Ion Beam Scanning Electron Microscopy) とは、高分解能の三次元イメージングおよびサンプル加工技術です。

FIBとは焦点イオンビームのことです。高エネルギーのイオンビームを使用してサンプルの表面を削り取り、詳細な加工および観察を行うことができます。イオンビームは非常に小さなスポットサイズでサンプルに焦点を当てることができ、サブミクロンまたはナノスケールの加工・観察が可能です。

SEMは走査電子顕微鏡のことです。高エネルギーの電子ビームを使用してサンプル表面をスキャンし、その表面の形状と構造を高い解像度で観察します。SEMは詳細な三次元イメージを生成する能力を持っており、FIBと組み合わせることで、サンプルの内部構造を描写することが可能です。

FIB-SEMの使用用途

FIB-SEMは高分解能および三次元イメージング能力により、さまざまな科学および工学の分野で使用されています。以下はFIB-SEMの使用用途一例です。

1. 材料分野

FIB-SEMはナノスケールの材料の研究に非常に有用です。金属ナノ粒子の形状や分布、ナノコンポジット材料内の異種物質の配置などを解析するのに使用されます。これにより、新しい材料の設計やナノテクノロジーの応用が可能です。

また、半導体デバイスや磁性材料などの内部構造を調査し、デバイスの性能などを調査するためにも使用されます。材料工学や電子デバイス製造の分野で重要な用途です。

2. バイオテクノロジー

生体試料の詳細な構造を調べるのために使用されます。細胞の内部構造や細胞核の構造を高い解像度で観察することが可能です。細胞生物学やがん研究などに有用です。

また、生体組織の三次元構造を可視化し、組織の微細構造や病理学的変化などを理解するのに使用されます。生物学や医療診断に関連する分野で重要な用途です。

3. 地学

地球の岩石や鉱物の微細構造を解析するためにFIB-SEMが活用されます。岩石や鉱物の結晶構造や結晶成長履歴などを詳細に調査することが可能です。これにより、岩石の形成と変化のメカニズムを理解し、地球の歴史を解読するために有用です。

FIB-SEMの原理

FIBの主要な要素は高エネルギーのイオンビームです。一般的にはガリウムイオンが使用されます。イオンビームは特定の領域にフォーカスすることができ、非常に小さなスポットサイズでサンプルにエネルギーを集中させることが可能です。

この高エネルギーのビームを使用してサンプル表面をスキャンし、その表面の形状や構造を高い解像度で観察します。これにより、サンプルの詳細な表面トポロジーを可視化することが可能です。

その高い解像度により、材料工学を始めとしたさまざまな分野で広く使用されます。ナノスケールおよびミクロスケールの研究と解析において不可欠なツールの一つです。

FIB-SEMの選び方

FIB-SEMを選ぶ際にはいくつかの要因を考慮する必要があります。以下はFIB-SEMの選定要素一例です。

1. 分解能

分解能はサンプル上の微小な構造や詳細をどれだけ解像度よく観察できるかを示す指標です。分解能が高いほど、より微細な構造を観察できます。分解能は電子ビームのサイズに関連しており、小さなビームサイズであれば高い分解能で観察可能です。

2. イオン源

イオン源はFIBの中心的な部分であり、使用されるイオンの種類を選定します。ガリウムイオン源が一般的ですが、ガリウム以外のイオン源も使用されることがあります。軟らかい材料にはガリウムが適していますが、硬い材料にはガリウム以外のイオン源が使用される場合も多いです。

3. 加速電圧

FIB-SEMの加速電圧は、電子ビームおよびイオンビームにエネルギーを印加する指標です。加速電圧が高いほどイオンビームや電子ビームは高速に加速され、より深いサンプルへの進入が可能です。ただし、電圧を高くしすぎると、サンプルに与えるダメージを増加させる可能性があります。

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