中空モーターとは
中空モーターとは、回転軸 (シャフト) が円筒形をしており、中心部が空洞になっているモーターのことです。
DCブラシレスモーター、ACサーボモーター、ステッピングモーター等の様々な種類のモーターで使用されており、シャフトの内側の空洞部分は、信号ケーブルや電源ケーブルを通したり、レーザーなどの光を通すスペースとして活用されています。また、円筒形のシャフトは軽量で大きな直径を作れるので、ダイレクトドライブ用のモーターにも適しています。
これらの利点により、中空モーターは省スペースが要求される機械の可動部分や、正確な位置決めが要求される機械、そして体内に入れる医療機器用の極小型モーターなど広範囲の分野で活用されています。
中空モーターの使用用途
中空モーターは、外部にケーブルを這わせるよりも回転軸の中心を通した方が省スペースで収まりが良い機械で使用されます。例えば産業用ロボットの回転するアームでは、駆動部に中空モーターを使用することで、回転部分を含めてアームの内側ケーブル類を通すことが可能になり、省スペース化に役立ちます。
また、小型・薄型でありながらギアを介さずに車輪を直接駆動する、ダイレクトドライブ用のモーターにも適しています。工場で稼働する搬送用ロボットの駆動輪や、電動アシスト付き自転車のモーターなどにも活用されています。
さらに、モーター外径がφ0.9mmで、外径φ0.2mm、内径φ0.18mmの中空シャフトを持った極小型のDCブラシレスモーターも開発されており、中心部に光ファイバーケーブルを通すことが可能です。このモーターは内視鏡などの医療機器や微小空間の観察装置への搭載が研究されています。
ACサーボモーター、ステッピングモーター等の中空モーターは、高い位置決め精度が要求される産業機械に幅広く採用されています。
中空モーターの原理
中空モーターが回転する原理は、通常の芯棒のシャフトを持ったモーターと同じでDCブラシレスモーター、ACサーボモーター、ステッピングモーター等の種類があります。
シャフトの先端部分は、リング状の接合部になっています。典型的な中空モーターは接合部に4個ほどのネジ穴が開けられており、そこに回転させる部品をねじ止めします。接合する部品側にも貫通穴があれば、モーターの反対側からケーブルを貫通できます。このことで、ケーブル類を外部に這わせる必要がなくなり、駆動部の周囲の必要とするスペースを小さくすることが可能です。
また、太さのあるシャフトを持っているのでギアを介さずに部品を直接接合するダイレクトドライブに向いています。そして、ギアを省略できることで回転時のノイズを小さくできます。このことは、静音性が求められる家電製品などに適しています。
また、中空モーターの太さのあるシャフトとその回転機構は、バックサッシュという出力軸の回転時に発生する遊びを低減できます。従って高精度な位置決め精度が要求される機械に適しています。
中空モーターの選び方
中空モーターを選択する際には、モーターの種類の選択の他、形状と大きさ、出力軸の径と長さ、出力トルク、回転速度、電圧と電流、防塵・防水性能などを考慮して選択します。
使用する機械の性質に応じてモーターの種類を選択するのは、芯棒タイプのシャフトを持ったモーターの場合と同様です。例えば、小型軽量のモーターにはDCブラシレスモーターが多く、高精度位置決めが必要な機械にはステッピングモーター、搬送系や一般産業機械などにはACサーボモーターというように、使用される場面は同じ傾向があります。
選択時に特に注意すべき点は、出力軸の径と長さです。これはモーターを搭載する機械や装置の構造に合わせて選定する必要があります。シャフトは回転するので、中を通るケーブルとの接触に注意する必要があります。
また、中空モーターの利点を最大限に活かすためには、完成された装置のイメージから遡って考えるのも有効です。すなわち、ケーブル類を露出させないすっきりした外観にする、ダイレクトドライブで車輪を少ない部品でスムースに動かす、小型高性能なモーターを従来では置けなかった場所に設置して高機能な装置を作るなどです。