グルタル酸

グルタル酸とは

グルタル酸とは、分子式がC5H8O4で表せるカルボン酸の1種です。

「ペンタン二酸」「1,3-プロパンジカルボン酸」とも呼ばれています。分子量は132.11 g/mol、融点は95~98 ℃、CAS登録番号は110-94-1です。ジカルボン酸のため、水に溶かすと比較的強い酸性を示します。

グルタル酸の使用用途

グルタル酸は溶解性が高く残留物が少ないため、はんだフラックスの調整やはんだペーストの製造に使用されています。また、ポリエステルポリオール、ポリアミドなどの有機合成原料としても有用です。グルタル酸には、ポリマーの弾性を低下させる作用があります。

そのほか、医薬品の中間体や無水グルタル酸・l-ケトグルタル酸・ペルオキシグルタル酸などの開始剤、香料、pH調整剤としても利用されています。

グルタル酸の性質

1. 物理的性質

グルタル酸は、白色もしくは薄い黄色の結晶性粉末です。水によく溶けて、アルコールやエーテル、クロロホルムにはよく溶けます。

グルタル酸の合成法は、1,3-ジブロモプロパンにシアン化ナトリウムを作用させてグルタロニトリル生成し、それを加水分解するという方法です。この反応は、まずシアン化物イオンを炭素に求核攻撃させてできるSN2反応から、シアン化物を加水分解するとカルボン酸が生成するという2つの反応を利用しています。

2. 生化学的性質

グルタル酸は、哺乳類ではリジン、ヒドロキシリジン、トリプトファンの中間代謝過程の異化反応により、中間体として生成されます。この過程でグルタル酸を生成するグルタリルCoA脱水素酵素が欠乏すると、グルタル酸血症I型という疾患となります。

この疾患は、アミノ酸の代謝が正常にできなくなることによってジストニア、ジスキネジア、尾状核や被殻の変性、前頭側頭葉萎縮、くも膜嚢胞といった重篤な症状を引き起こすものです。難病とされており、この疾患の生化学的なプロファイルは尿中のグルタル酸および2-ヒドロキシグルタル酸濃度の上昇なので、尿中、血漿中のグルタル酸はグルタル酸尿症1型の指標となります。

また、グルタル酸尿症2型という疾患もあります。この疾患は、ミトコンドリア内の電子伝達フラビン蛋白 (ETF) およびETF脱水素酵素 (ETFDH) の先天的欠損により生じる疾患です。ETFおよびETFDHは、ミトコンドリア内におけるβ酸化経路を含む複数の脱水素酵素反応によって生じる電子を電子伝達系に供給するため、酵素が欠乏すると代謝をうまく行えなくなります。その結果、新生児が発症すると、生後すぐからの重篤な心筋症や心不全、および非ケトン性低血糖などを示す症例が多くなっています。

グルタル酸のその他情報

1. 生体内のグルタミン酸誘導体

グルタル酸の2位の炭素の水素原子を1つアミノ基に置換することで、グルタミン酸になります。また、同じくグルタル酸の2位の炭素にカルボニル基が結合したものはα-ケトグルタル酸と呼ばれます。

α-ケトグルタル酸は、哺乳類の代謝経路の1つであるクエン酸回路の中間体として重要な役割を果たしている物質です。グルタミン酸などのアミノ酸の代謝経路でも、中間体としてα-ケトグルタル酸を経由します。

2. 工業的に使用されるグルタル酸誘導体

グルタル酸を還元剤で処理することによって生成するグルタルアルデヒドは、工業的によく使用される物質です。日本における輸入量は、平成19年度においておよそ100~1,000t/年未満です。

主な使用用途として、皮のなめし剤、紙プやラスチックなどへの定着剤、内視鏡や手術器具類などの殺菌消毒剤、クーリングタワー等の殺藻剤、畜鶏舎や養鶏用器具機材の殺菌消毒剤、レントゲン写真の現像液などが挙げられます。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0107-0054JGHEJP.pdf

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