ゲルマン

ゲルマンとは

ゲルマンとは、水素化ゲルマニウムとも呼ばれる、ゲルマニウムの水素化物です。

最もシンプルなゲルマニウムの水素化物であり、ゲルマニウムの有用な化合物の1つです。ゲルマンの燃焼によって、有毒な二酸化ゲルマニウム (GeO2) が生成します。

ゲルマンは溶血毒であり、ヘモグロビン尿を起こします。毒物および劇物取締法で「劇物」に指定されており、消防法では「貯蔵等の届出を要する物質」とされています。

ゲルマンの使用用途

ゲルマンは、CVDや気相成長ガス、オプティカルファイバーなどに使用されています。CVD (化学気相成長) とは、化学的な成膜方法のことです。

真空状態でガス状の気体原料を送り込み、熱などのエネルギーを与えて化学反応を起こし、基材や基板の表面に薄膜や微粒子を吸着・堆積させます。

ゲルマンは高温でゲルマニウムと水素に分解し、この熱不安定性を利用して、半導体産業では半導体用の特殊材料ガスとして使用されています。

ゲルマンの性質

ゲルマンの融点は-165°C、沸点は-88°Cです。刺激臭のある無色の圧縮ガスです。水に溶けず、水と接触すると水素が発生します。常温では安定です。空気中では173°Cで発火します。280°C以上で分解して、ゲルマニウムと水素を生成して自然発火し、330°C以上で爆発します。

液体アンモニア溶液でゲルマンとアルカリ金属が反応すると、白色の結晶状固体であるMGeH3を生成可能です。GeH3の自由回転を伴って、カリウムやルビジウムの塩は、塩化ナトリウム型構造を取っています。

それに対してセシウム塩 (CsGeH3) は、ヨウ化タリウム型構造を取っています。ヨウ化タリウム型構造は、歪んだ塩化ナトリウム型構造です。

ゲルマンの構造

ゲルマンの化学式はGeH4と表されます。液体アンモニア中では、GeH3とNH4+に電離しています。

ゲルマンのモル質量は76.62g/mol、密度は3.3kg/m3です。ゲルマニウムの水素化物であり、メタンの炭素原子をゲルマニウムに変換した構造を持っています。メタンやシランと同様に、四面体型構造を取っています。

ゲルマンは、ゲルマニウムの水素化物であるGenH2n+2 (n = 1~5) の総称です。通常n = 1のGeH4を指しますが、n = 2以上はジゲルマン、トリゲルマンなどと呼ばれます。水素化物の水素原子をアルキル基などで置換した有機金属化合物も、ゲルマンと総称する場合もあります。

ゲルマンのその他情報

1. ゲルマンの合成法

工業的に多くの合成法が知られています。例えば化学還元法では、水や有機溶媒中で還元剤を用いて、金属ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムのようなゲルマニウム化合物を還元します。実験室スケールでは、水素化物試薬によって、4価のゲルマニウムを還元可能です。

具体例として、水素化ホウ素ナトリウムとメタゲルマニウム酸ナトリウムの反応が挙げられます。電気化学的還元法では、カドミウムやモリブデンなどの金属を陽極に用いて、電解質水溶液に浸した金属ゲルマニウムの陰極に電圧をかけます。

陰極が反応して固体の酸化カドミウムや酸化モリブデンが生成し、陽極でゲルマンと水素ガスを生成可能です。プラズマ法では、高周波プラズマ源を使用します。水素原子を金属ゲルマニウムに衝突させると、ゲルマンやジゲルマンが得られます。

2. ゲルマンの関連化合物

GeH4以外にも、GenH2n+2 (n = 2~5) の化合物も知られています。Ge-Mg合金の加水分解やGeH4の放電によって、生成物を分離精製すると得られます。Ge2H6の分子量は151.27、融点は-109°C、沸点は29°C、-109°Cでの密度は1.98g/cm3であり、Ge3H8の分子量は225.89で、融点は-105.6°C、沸点は110.5°C、-105°Cでの密度は2.20g/cm3です。

Ge4H10の分子量は300.52、沸点は176.9°Cであり、Ge5H12の分子量は375.15、沸点は234°Cです。テトラアルキルゲルマンは、GeCl4にアルキルグリニャール試薬やジアルキル亜鉛を反応させると生成します。

例えば(CH3)4Geは、室温で無色の液体であり、融点は-88°C、沸点は43°Cです。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0577.html

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