ペンタクロロチオフェノール

ペンタクロロチオフェノールとは

ペンタクロロチオフェノール (英: Pentachlorothiophenol) とは、白色〜灰褐色粉末の有機塩素化合物です。

IUPAC名は2,3,4,5,6-ペンタクロロベンゼンチオール (英: 2,3,4,5,6-Pentachlorobenzenethiol) です。別名として、ペンタクロロベンゼンチオール (英: Pentachlorobenzenethiol) 、PCTPとも呼ばれます。

なお、ペンタクロロチオフェノールは、主な国内法令に該当しません。米国では、有害物質規制法 (TSCA) において難分解性、高蓄積性、毒性 (PBT) 物質に定められています。

ペンタクロロチオフェノールの使用用途

ペンタクロロチオフェノールは、合成ゴムまたは天然ゴムのしゃく解剤として、主に使用されます。しゃく解剤とは、ゴムの素練り行程を効率化するために加えられ、ラジカル分解によりゴムの分子量を低下させるものです。

分子量が低下すると、粘度も低下するため、ゴムのミキシング行程を容易にすることが可能です。機械的なせん断のみでも、ゴムの分子量は低下します。しかし、しゃく解剤を使用すると、混合時の粘度低下が時間や温度の変化に影響されにくくなり、バッチ間の粘度の均一性が得られます。したがって、しゃく解剤は、ゴムの加工性向上に重要な添加剤です。

ペンタクロロチオフェノールまたはペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩は、しゃく解剤として広く使用されてきました。しかし、米国でPBT (難分解性、高蓄積性、毒性) 物質に指定されたことにより、米国では含有する製品を含めた製造、輸入、加工、流通が不可能となりました。このため、現在は、ビス(2-ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、通称BASSを主剤とするしゃく解剤への置き換えが進んでいます。

ペンタクロロチオフェノールの性質

化学式はC6HCl5Sで表され、分子量は282.38です。CAS番号は133-49-3で登録されています。融点は231.5°C、常温において固体で、密度は1.7g/mlです。

144.6 °Cに引火点を持つ可燃性の物質で、不快な臭いを持ち、水に溶けません。また、単斜晶の結晶構造を持ちます。ペンタクロロチオフェノールは生分解性が低く、水生生物に対して生物蓄積性と毒性があります。

また、ペンタクロロベンゼンチオールは、ヘキサクロロベンゼンの代謝物です。ラットなどの動物にヘキサクロロベンゼンを投与すると、体内で代謝され、尿や排泄物中にはペンタクロロベンゼンチオールが含まれます。

ペンタクロロチオフェノールのその他情報

1. ペンタクロロチオフェノールの製造法

ペンタクロロチオフェノールは、ヘキサクロロベンゼンをメタノール中で硫化ナトリウムと硫黄で処理するか、硫化水素ナトリウムで処理することにより得られます。

また、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素などの酸性触媒存在下、硫化水素とペンタクロロフェノールを反応させることでも合成可能です。

2. 取り扱い及び保管上の注意

皮膚に付着した場合
ペンタクロロチオフェノールは、皮膚腐食性や刺激性を持ちます。皮膚が暴露しないよう、使用時は必ず保護衣と保護手袋を着用してください。

皮膚に付着した際は、すぐに大量の水と石けんでしっかり洗い流します。衣類が汚染された場合は、すべて脱ぎ、袋に入れるなどして隔離してください。皮膚刺激が続く場合や皮膚に炎症が出た場合は、医師に連絡して診断を受けてください。

保管する場合
ペンタクロロチオフェノールは、光によって変質する性質を持ちます。遮光性のガラス製容器に入れ、密閉して保管してください。保管場所は、換気がよく涼しい場所が最適です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0232-9148JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Pentachlorothiophenol

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