ブタンジオール

ブタンジオールとは

1,4-ブタンジオールの基本情報

図1. 1,4-ブタンジオールの基本情報

ブタンジオールとは、分子式がC4H10O2で表される二価アルコールです。

ブタンジオールには、一般的に広く用いられる1,4-ブタンジオール以外にも、1,2-ブタンジオールや1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールの、合計4つの異性体が存在します。

1,4-ブタンジオールは、GHS分類で「急性毒性 (経口) 」に分類されています。消防法では「第4類第三石油類水溶性」に指定されています。労働安全衛生法、労働基準法、PRTR法、毒物および劇物取締法には、いずれも該当していません。

ブタンジオールの使用用途

ブタンジオールの使用用途は、その異性体ごとに異なり、いずれの異性体も工業的に広く用いられています。

各異性体での代表的な使用用途として、1,2-ブタンジオールは樹脂やアミノ酸の原料、1,3-ブタンジオールは溶媒、樹脂原料、化粧品添加剤などが挙げられます。また、1,4-ブタンジオールは樹脂原料、溶媒、2,3-ブタンジオールは医薬品や化粧品の原料として使用可能です。

特に1,4-ブタンジオールは、一般的に広く用いられている溶媒であるテトラヒドロフランやγ-ブチロラクトンの原料となることからも、工業的に重要な化合物です。

ブタンジオールの性質

1,2-ブタンジオールの融点は-50°C、 沸点は195〜196.9°Cで、密度は1.0023g/cm3です。1,3-ブタンジオールの融点は-54°C、沸点は203〜204°Cで、密度は1.0053g/cm3です。1,3-ブタンジオールは生物に対して低血糖剤として働くほか、β-ヒドロキシブチレートに変換されて脳の新陳代謝の基質として働きます。

1,4-ブタンジオールの融点は20°C、沸点は230°Cで、密度は1.010g/cm3です。体内で1,4-ブタンジオールは、γ-ヒドロキシ酪酸に代謝されます。2,3-ブタンジオールの融点は7.6°C、沸点は約180°Cで、密度は1.000~1.010g/cm3です。

ブタンジオールの構造

ブタンジオールの異性体の構造

図2. ブタンジオールの異性体の構造

ブタンジオールは、ヒドロキシル基を2個有するn-ブタンです。分子式はC4H10O2で、モル質量は90.12g/molです。1,1-ブタンジオールなどは不安定であり、すぐ脱水してブチルアルデヒドに変わります。

1,2-ブタンジオールは、2位の炭素がキラル中心です。光学活性を持っており、鏡像異性体である(R)-1,2-ブタンジオールと(S)-1,2-ブタンジオールが存在します。同様に1,3-ブタンジオールにも鏡像異性体があります。そして、2,3-ブタンジオールには3つの立体異性体があり、(2R,3R)-(−)-2,3-ブタンジオール、(2S,3S)-(+)-2,3-ブタンジオール、meso-2,3-ブタンジオールの3種類です。

ブタンジオールのその他情報

1. 1,4-ブタンジオールの合成法

1,4-ブタンジオールの合成には、アセチレンホルムアルデヒドのレッペ反応 (英: Reppe reaction) によって得られた1,4-ブチンジオールを、水素化する製造方法が広く用いられています。

コハク酸やマレイン酸などの無水物をメチルエステルに変換した後、水素化しても1,4-ブタンジオールを合成可能です。

2. 1,4-ブタンジオールの反応

1,4-ブタンジオールとテレフタル酸の反応

図3. 1,4-ブタンジオールとテレフタル酸の反応

1,4-ブタンジオールは、ポリブチレンテレフタラートを代表とするプラスチックや繊維の原料です。1,4-ブタンジオールとテレフタル酸の反応によって、ポリブチレンテレフタレートが製造されます。

エンジニアリングプラスチック (英: Engineering plastic) の一つであるポリブチレンテレフタレートは、熱安定性、電気特性、寸法精度などに優れており、自動車部品や電気電子部品に幅広く利用可能です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0102-0732JGHEJP.pdf

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