フェニルアセトンとは
フェニルアセトンとは、アセトンの水素のうち1つがフェニル基によって置換された構造を持つ有機化合物です。
C9H10Oという化学式で表されます。フェニル-2-プロパンという別名を持つことから、P2Pとも呼ばれています。フェニル酢酸と無水酢酸を混合し、ピリジン触媒を加えることでフェニルアセトンを合成可能です。
フェニルアセトンは、メタンフェタミンやアンフェタミンの原料となることから、「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」「覚醒剤取締法」によって取り扱いを規制されています。
フェニルアセトンの使用用途
フェニルアセトンは、メタンフェタミンやアンフェタミンの原料として使用されています。メタンフェミンは中枢神経興奮作用、精神依存性などを持つ物質です。
日本では「シャブ」や「エス」、「スピード」などの俗称で呼ばれている覚せい剤です。手術中の虚脱状態からの回復など、ごく限定的な用途に限り、医療現場での投与が認められています。医療薬としての名称は「ヒロポン」です。
アンフェタミンは、メタンフェミンよりやや弱い中枢神経興奮作用を持つ物質です。覚醒剤取締法によって覚醒剤に指定されており、医療用での用途は認められていません。アメリカやヨーロッパなどを中心に、覚醒剤として流通しています。
フェニルアセトンの性質
フェニルアセトンは、分子量134.18、CAS番号103-79-7で表わされる無色無臭の液体です。融点および凝固点−15℃、引火点90℃、分解温度に関するデータはありません。
密度1.003gPcm3 (20°C) 、水にわずかに溶解します。標準的な大気条件において化学的に安定ですが、高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる危険性があります。
75℃以上の温度帯からは危険とみなされているため、取扱いには注意が必要です。熱と強酸化剤を避ける必要があります。
フェニルアセトンのその他情報
1. 安全性
GHSでは、引火性液体 (区分4) 、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 (区分2A) に分類され、可燃性があります。研究開発での使用のみ許可されており、薬事、家庭用その他の用途には用いません。
急性毒性については、現在のところ有害性データはありませんが、化学的、物理的および毒性学的性質の研究は不十分と考えられているため、人体への接触、吸引は避ける必要があります。
2. 応急措置
眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗い、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外し、洗浄を続けます。刺激などの症状が続く場合は、直ちに医師の診察、手当てが必要です。
吸入した場合は、新鮮な空気を吸い、皮膚に接触した場合は、汚染された衣類を全て脱ぎ、 皮膚を流水または全身シャワーで洗います。万が一飲み込んだ場合は、直ちに多くても2杯の水を飲ませ、医師に相談します。
3. 火災時の措置
火災時は、水、泡、二酸化炭素、および粉末の消火剤を使用します。使用する消火剤に制限はありません。周辺環境、状況に適した消火剤を使用します。
火災時は、可燃性の炭素酸化物が発生する可能性があり、高熱で空気と反応して爆発性混合物を生じる可能性があります。また、火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあることから、消火時は自給式呼吸器の着用が必要です。
蒸気は空気より重く、床に沿って広がることがあります。フェニルアセトンの入った容器は、危険ゾーンから直ちに移動させ水で冷やします。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないよう注意が必要です。
4. 取扱方法
換気の良い場所で作業を行い、炎、熱および発火源から遠ざけ、静電気放電に対する予防措置が必要です。フェニルアセトンは、消防法において、第4類引火性液体、第三石油類です。
作業者は、保護眼鏡、保護衣、保護手袋、保護面を着用し、必要に応じて呼吸用保護具を使用して作業を行います。作業中は禁煙とし、取扱後は汚染された衣類を着替え、よく手を洗います。
容器は密閉して保管し、内容物および容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、承認された処理施設にて廃棄が必要です。