塩化リチウムとは
塩化リチウム (英: Lithium Chloride) とは、リチウムと塩素からなるイオン性化合物塩です。
別名は、クロロリチウム (英: Chlorolithium) やリチウムクロリド、リチウムクロライドなどです。溶液中で塩化物イオンを発生させます。また、リチウムイオンはルイス酸としての作用が期待できます。
塩化リチウムの使用用途
1. リチウム金属原料
塩化リチウムは、リチウム金属を製造するために使用されます。リチウム金属は、塩化リチウムと塩化カリウムの混合物を450℃で融解させて電気分解することにより製造されます。
2. カップリング反応の添加剤
塩化リチウムは、右田・小杉・スティルカップリング (英: Migita-Kosugi-Stille coupling) の添加剤として用いられます。右田・小杉・スティルカップリングとは、パラジウム触媒存在下、有機スズ化合物とハロゲン化物をクロスカップリングさせ、炭素‐炭素結合を形成する反応です。
塩化リチウムを添加すると、スズ‐塩化物イオン結合が形成されトランスメタル化が促進されるため反応速度が加速するとされています。
3. その他
溶融した塩化リチウムは、金属酸化物を溶解することから、アルミはんだの補助剤として、自動車部品の製造に利用されます。
吸湿性を持つことから、空調装置の除湿剤としても利用されています。塩化リチウムは、引火すると赤く燃えることから、花火などの炎色剤の1種です。
塩化リチウムの性質
化学式はLiClで表され、分子量は42.39です。CAS番号は7447-41-8で登録されています。塩化リチウムは融点614°C、沸点は1357°Cで、常温で無色の結晶、密度2.07g/mlの固体です。
吸湿性で、無臭、塩味を持ちます。アルコーやエーテル、アセトン、ピリジンに可溶です。塩化ナトリウムや塩化カリウムと比べて、メタノールなどの極性の有機溶媒によく溶けます。水へは非常に溶けやすく、25 °Cで100gの水には84.5 g溶けます。水溶液はpH5.0〜7.0と、中性~弱アルカリ性です (50g/L、25℃) 。
塩化リチウムは、塩化物イオンの発生源として、金属塩と混合すると、不溶性の塩化物塩を沈殿させます。
塩化リチウムの種類
塩化リチウムは、数種類の水和物が存在します。他のアルカリ金属とは異なり、一水和物、三水和物、五水和物の水和物を形成します。
塩化リチウムのその他情報
1. 塩化リチウムの製造法
炭酸リチウムまたは水酸化リチウムと塩酸を作用させることで、塩化リチウムが得られます。塩化リチウムを含む水溶液は強い腐食性を持つため、反応には特殊なスチール製、またはニッケル製の装置が必要です。
反応後の溶液を濃縮することで、塩化リチウムは結晶化します。その後母液から分離して乾燥させます。無水塩化リチウムは、塩化水素気流中で加熱することによって水和物から調製可能です。
2. 取り扱い及び保管上の注意
取り扱い時の対策
強酸化剤は、塩化リチウムの混触危険物質です。取り扱い時および保管時の接触を避けてください。塩化リチウム水溶液は、強い腐食性を持つため、目や皮膚に接触しないように、慎重に取り扱う必要があります。
取り扱う際は、保護手袋と側板付きの保護メガネ、袖の長い保護衣を着用し、ドラフトチャンバー内で使用してください。使用後は、手をよく洗います。
火災の場合
燃焼により、ハロゲン化物と金属酸化物など、刺激性で有毒なガスと蒸気を放出するおそれがあります。消火には、水噴霧や泡消火剤、粉末消火剤、炭酸ガス、乾燥砂などを用いてください。
皮膚に付着した場合
塩化リチウムは、皮膚腐食性や刺激性を持ちます。皮膚に付いた際は、多量の水と石鹸で優しく洗います。汚染された衣類は脱ぎ、再利用する場合は洗濯します。皮膚に刺激が生じた場合は、医師の手当てを受けてください。
飲み込んだ場合
塩化リチウムは、経口摂取で急性毒性を持ちます。生殖能や胎児への悪影響の恐れや神経系臓器の障害の恐れがあります。飲み込んだ場合は、すぐに口をすすいでください。気分が悪い場合は、医師に連絡します。
保管する場合
ポリエチレン製の容器に密閉し、直射日光を避けた涼しい場所に保管してください。保管場所は施錠します。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7447-41-8.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0112-0116JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Lithium-Chloride