モリブデン酸

モリブデン酸とは

モリブデン酸とは、白色もしくはうすい黄色の粉末で、無臭の無機化合物です。

国内法規上の適用法令として、安衛法 (労働安全衛生法) の「名称等を表示すべき危険物及び有害物」「名称等を通知すべき危険物及び有害物No. 603」が挙げられます。

モリブデン酸の使用用途

モリブデン酸の使用例は、ビル配管などに使用される炭素鋼の不動態型防錆剤としての原料です。他に医薬、顔料、陶器の釉薬 (ゆうやく) としても使用可能です。

また、多くの酸化モリブデンは、酸化などにおける不均一触媒として用いられています。モリブデン酸とその塩は、アルカロイド (英: alkaloid) を推定するためのフレーデ試薬 (英: Froehde reagent) に使用されています。アルカロイドとは、主に塩基性を示す、窒素原子を含む天然由来の有機化合物の総称のことです。

適用法令は、安衛法のほか化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)で「第1種指定化学物質」第1種-No. 453」、水質汚濁防止法や大気汚染防止法にも適用が規定されています。

モリブデン酸の性質

モリブデン酸の融点は300℃で、反磁性固体です。モリブデン酸は水酸化アルカリ溶液やアンモニア水に溶けますが、水、エタノールアセトンには、ほとんど溶けません。

なお、化学式はH2MoO4、分子量は161.95、CAS登録番号は7782-91-4です。一水和物のMoO3・H2Oや二水和物のMoO3・2H2Oの性質が、よく調べられています。

モリブデン酸の構造

モリブデン酸の固体は、配位高分子 (英: coordination polymer) です。例えば、モリブデン酸の一水和物は、4つの頂点を共有している八面体配位をしたMoO3・H2Oユニットの層で形成されています。

それに対してモリブデン酸の二水和物は、同じ層構造の層の間に、余分な水分子がインターカレーション (英: Intercalation) しています。すなわち、モリブデン酸の固体は、多座配位子と金属イオンから構成される連続構造を有する錯体です。

その一方で酸性水溶液中におけるモリブデン酸は、MoO3(H2O)3という錯体が観測されます。それぞれのモリブデン原子は、3つのアクア配位子と3つのオキソ配位子を有し、再度八面体形分子構造を取っていると考えられています。

モリブデン酸の塩はモリブデン酸塩と呼ばれていて、塩基をモリブデン酸溶液へ加えることで得ることが可能です。

モリブデン酸のその他情報

1. モリブデン酸の関連化合物

モリブデン酸塩 (英: molybdate) は、モリブデン(VI)のオキソアニオンを含んだ化合物です。モリブデンは多種多様なオキソアニオンを作りますが、ポリオキソアニオンは固体状態でのみ存在します。

モリブデンの単量体オキソアニオンのサイズは、モリブデン酸カリウムに含まれる単純なMo2O72-から、154個のMoを持つイソポリモリブデンブルーまで、あらゆるものが知られています。

モリブデンは第6族元素です。しかし他の第6族元素とは異なる振る舞いをします。例えば、クロムのオキソアニオンはすべて四面体構造を基にしています。ただしタングステンはモリブデンに似ており、配位数6のタングステンを含むさまざまなタングステン酸塩を形成することが可能です。

2. モリブデン酸イオンの具体例

小さめのイオンであるMoO42-は、Na2MoO4やCaMoO4に存在しています。Mo2O72-はテトラブチルアンモニウム塩に存在します

MoO42-やMo2O72-における、モリブデンの配位数は4のみです。MoO42-は四面体で、Mo2O72-は1つの酸素原子が橋渡して1つの角を共有する2つの四面体構造だと考えられています。

それ以外にも、Mo3O102-、Mo4O132-、Mo5O162-、Mo6O192-、Mo7O246-、Mo8O264-などのモリブデン酸イオンが存在します。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0113-0333JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_7782-91-4.html

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