シクロヘプタン

シクロヘプタンとは

シクロヘプタンの基本情報

図1. シクロヘプタンの基本情報

シクロヘプタン (Cycloheptane) とは、化学式C7H14で表されるシクロアルカン (脂環式有機化合物) です。

七員環構造を取ります。別名はヘプタメチレン、CAS登録番号は291-64-5 です。分子量98.2、融点-12℃、沸点 118℃であり、常温では無色の油状液体です。

臭いはおだやかな芳香と形容されます。密度は0.8110g/cm3であり、しばしば無極性溶媒として用いられます。エタノールジエチルエーテルに容易に溶け、ベンゼンクロロホルムにも溶解可能です。なお、水には溶けません。

シクロヘプタンの使用用途

シクロヘプタンの主な用途は、有機化学薬品分析のための実験用化学薬品、有機合成原料です。官能基置換のない、七員環シクロアルカンであるという構造的特徴から、無極性溶媒として用いられたり、ビルディングブロックとして用いられたりします。

化学工業においては、無極性溶媒や化学薬品、医薬品を製造する合成中間体として使用されます。

シクロヘプタンの特徴

シクロヘプタンの安定配座

図2. シクロヘプタンの安定配座

シクロヘプタンは7員環ですが、平面構造を取らないため、三次元的構造をしており、いくつかの配座があります。安定配座には、ねじれいす形、ねじれ舟形という2つの構造があり、最も安定なのはねじれいす形です。

それ以外の配座には、いす形、舟形、T3があり、安定配座間の遷移状態においてこれらの構造を取ります。また、塩化アルミニウムの作用によって環縮小反応が起こって異性化し、メチルシクロヘキサンが生成します。

引火点は6℃と低く、可燃性の高い物質です。熱や火炎に曝すと火災の危険性が高いとされています。強酸化剤などの酸素に富む物質とは反応性が高く、保管においては混触を避けることが必要です。

シクロヘプタンの種類

シクロヘプタンは、一般的に研究開発用試薬製品として販売されています。容量の種類は、1g , 5g , 25g , 25mLなどがあり、実験室で取扱いやすい、小型・小容量での提供が一般的です。常温で保管・輸送が可能な試薬製品として取り扱われます。

シクロヘプタンは引火性や可燃性が高く、人体にも有害な物質です。そのため、労働安全衛生法では「危険物・引火性の物」、消防法における 「第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体」として取り扱われる製品です。

そのほか、海洋汚染防止法や船舶安全法、航空法でも規制を受けています。法規制を遵守した保管・輸送・収受を心がけることが必要とされます。

シクロヘプタンのその他情報

1. シクロヘプタンの合成

シクロヘプタンの合成

図3. シクロヘプタンの合成

シクロヘプタンの合成方法には、シクロヘプタノンのクレメンゼン還元によるカルボニル基の還元や、1,6-ジブロモヘキサンとマロン酸ジエステルを用いた環化反応などがあります。

2. シクロヘプタンの安全性情報

シクロヘプタンは引火性・可燃性が高く、危険性の高い物質です。人体にとっても有害であり、 眠気やめまいを引き起こします。また、蒸気によって目の炎症が引き起こされ、大量に吸引すると換気低下の恐れがあるとされる物質です。

取り扱いの際は、 熱、火花、裸火、高温のもののような着火源から遠ざけ、使用時には換気を行うことが重要です。また、適切な保護具を使用し、ミスト、蒸気、スプレーの吸入を避けること、直接触らないようにすることも必要です。

もし、人体と接触してしまった場合は、衣類を脱ぐ、流水で流すなど、液体を速やかに取り除くべきとされています。吸入した場合は医療機関の受診が必要です。また、廃棄の際は、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に業務委託し、適切に廃棄処分を行うことが求められます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/291-64-5.html

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