亜硝酸アンモニウムとは
亜硝酸アンモニウムとは、亜硝酸塩の1種であり、無色の結晶です。
非常に不安定で反応性の高い化合物で、各種有機化合物、肥料、火薬の製造に使用されています。爆発性が高く、分解すると亜酸化窒素、水、窒素ガスが発生します。
酸化窒素とアンモニア、または炭酸アンモニウムを反応させて得られます。潮解性があり、非常に不安定なため、室温でも水と窒素に分解してしまうことが特徴です。
亜硝酸アンモニウムは、酸化窒素とアンモニア、または炭酸アンモニウムを低温・高圧反応させることで得られます。
消防法では「危険物第1類・酸化性固体・硝酸塩類」に該当し、 労働安全衛生法 では、「名称等を表示すべき危険物および有害物」に該当します。
亜硝酸アンモニウムの使用用途
亜硝酸アンモニウム (NH4NO2) は、その不安定性から用途が限られており、主に実験室での使用に限定されています。亜硝酸アンモニウムの主な用途は、窒素ガス製造のための試薬です。
また、肥料やダイナマイトなどの火薬の製造における窒素源としても使用されます。しかし、その非常に不安定な性質のため、商業的な火薬の製造にはあまり使用されていません。さらに、亜硝酸アンモニウムはロケット燃料の成分や他の化合物の合成における実験用試薬として使用されてきました。
その他、亜硝酸アンモニウムは、肥料や火薬の原料、硝酸塩原料、冷却剤として使用されることも多いです。最も身近なものとして、冷却剤が挙げられます。硝酸アンモニウムと同様に、水と混ぜることによって吸熱反応を起こすことで、冷却効果が得られるというものです。
また、肥料として使用する場合は、亜硝酸アンモニウムから分離された窒素が、土中で微生物などにより酸化され、硝酸性窒素へと変化する可能性があるため、使用には注意が必要です。
亜硝酸アンモニウムの性質
亜硝酸アンモニウムは水に非常によく溶け、吸湿性があります。金属表面と接触すると、腐食性の溶液を形成することがあります。
また、亜硝酸アンモニウムは、白色またはわずかに黄色の結晶性固体です。非常に不安定かつ反応性の高い化合物であり、室温において徐々に水と窒素に分解します。
その他、加熱や衝撃、摩擦によって爆発的に分解する性質もあります。これは、亜硝酸アンモニウムが強い酸化剤であり、他の化合物に容易に酸素を供与することができるためです。
亜硝酸アンモニウム溶液は高いpHと低い温度で安定し、pHが7.0を下回ると爆発する恐れがあります。安全なpHを維持するためには、アンモニア水を加えることが一般的です。
亜硝酸アンモニウムの構造
亜硝酸アンモニウムは化学式NH4NO2で表され、アンモニウムイオン (NH4+) と亜硝酸イオン (NO2-) がイオン結合している構造を持ちます。 分子は四面体構造をとり、窒素原子と四つの水素原子が対称的に配置されています。
亜硝酸イオンは、一方向に二重結合を持つ非対称な構造です。分子の形状は直鎖状で、N-N-O結合角は120°となっています。
亜硝酸アンモニウムのその他情報
亜硝酸アンモニウムの製造方法
亜硝酸アンモニウムは、二酸化窒素および一酸化窒素ガスをアンモニア水に吸収させることによって調製されます。また、バリウムや鉛の亜硝酸塩と硫酸アンモニウムの組み合わせや、亜硝酸銀と塩化アンモニウム、過塩素酸アンモニウムと亜硝酸カリウムなどを用いた反応でも得ることが可能です。
これらの反応で生じた沈殿物を濾過し、濾液を濃縮すると、水溶性の無色結晶を形成します。また、オゾンや過酸化水素によるアンモニアの酸化反応でも合成可能です。
これら方法で生成された亜硝酸アンモニウムは、空気や水分に曝されると容易に分解し、硝酸アンモニウムとアンモニアを生成するため、取り扱いには十分な注意が必要です。