パパベリンとは
パパベリン (英: Papaverine) とは、アヘンアルカロイドの1種です。
IUPAC名は1- [ (3,4-ジメトキシフェニル) メチル] -6,7-ジメトキシ-イソキノリン (英: 1- [ (3,4-dimethoxyphenyl) methyl] -6,7-dimethoxyisoquinoline) です。別名として、6,7-ジメトキシ-1- (3,4-ジメトキシベンジル) イソキノリン (英: 6,7-Dimethoxy-1- (3,4-dimethoxybezyl) isoquinolien) やRobaxapapとも呼ばれます。
パパベリンの使用用途
パパベリンは、医薬品に使用され、アヘン中に0.8〜1%存在します。同じくアヘンから抽出されるモルヒネと比べ、中枢への作用や麻酔効果は弱いです。中枢作用の代わりに、パパベリン塩酸塩は、内臓平滑筋や血管平滑筋を弛緩させる作用を持ちます。
内臓を動かしている平滑筋の異常性緊張や痙れんを抑制させるため、消化管の緊張による腹痛を緩和することが可能です。具体的には、胃炎や胆管・胆のう系の疾患に伴う内臓平滑筋の痙攣に用いられます。
また、血管平滑筋の弛緩により、血行を促進することも可能です。具体的には、急性動脈塞栓や急性肺塞栓、冠循環障害、末梢循環障害による血管の拡張および、上記症状の改善に使用されます。
パパベリンの性質
化学式はC20H21NO4で表され、分子量は339.39です。CAS番号は58-74-2で登録されています。パパベリンは融点147°C、常温で白色結晶性、密度1.337g/ml (20℃) の固体です。
光や湿気に不安定な性質を持ちます。アルコールやエーテル、アセトン、ベンゼン、ピリジンなどに溶けます。クロロホルムや石油エーテルへの溶解度は低く、水へは17 °Cで35mg/Lとほとんど溶けません。
酸性・アルカリ性の程度を表すpHは2.0〜2.8、酸解離定数 (pKa) は8.07 (25 °C) です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標の1つです。pKa が小さいほど強い酸であることを示します。
パパベリンの種類
パパベリンは、通常塩酸塩 (cas登録番号: 61-25-6) として販売されています。パパベリン塩酸塩は、化学式C20H22ClNO4で表される分子量375.85の白色結晶または結晶性粉末です。
融点は、220〜225℃で、アルコールやクロロホルムに溶け、水へは25mg/mlの溶解性を持ちます。
パパベリンのその他情報
1. パパベリンの製造法
パパベリンの生成法は、アヘンから単離する方法と化学合成による方法の2種類です。現在は、化学合成により得る方法が主流です。
フェネチルアミンとアシルクロライドのショッテン・バウマン反応 (英: Schotten-Baumann Reaction) によりアミドを合成した後、五酸化リンを用いたビシュラー・ナピエラルスキー反応 (英: Bischler-Napieralski Reaction) と呼ばれる環化反応により3,4-ジヒドロイソキノリンを得ます。続いて温和な条件下、脱水素反応によりパパベリンが合成できます。
2.パパベリンの副作用
便秘やめまい、ほてり、口の渇き、動悸などが報告されています。重篤な副作用は特になく、安全性の高い薬として知られています。
眼圧上昇を引き起こす恐れがあるため、緑内障患者への使用には注意してください。
3. パパベリンの法規情報
パパベリンは、以下の国内法令に指定されています。
- 危険物船舶運送及び貯蔵規則
毒物類・毒物 (危規則第3条危険物告示別表第1) - 航空法
毒物類・毒物 (施行規則第194条危険物告示別表第1)
4. 取り扱い及び保管上の注意
取り扱い時の対策
強酸化剤は、混触禁止物質に指定されています。取り扱い時および保管時の接触は避けてください。
取り扱う際は、必ず保護衣と保護手袋、保護メガネを着用し、局所排気装置内で使用してください。
火災の場合
燃焼すると、一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) 、窒素酸化物 (NOx) 、塩化水素 (HCl) ガスなどの有毒なガスと蒸気を生成することがあります。水スプレー (水噴霧) 、二酸化炭素 (CO2) 、粉末消火剤、泡、消火砂などを用いて消火してください。使用禁止の消火剤は特にはありません。
保管する場合
パパベリンは、光によって変質するおそれがあります。遮光したガラス製の容器に入れて密閉して保管してください。保管場所は、直射日光の当たらない、換気がよく涼しい場所が好ましいです。