トリエチレングリコールとは
図1. トリエチレングリコールの基本情報
トリエチレングリコール (Triethylene glycol, TEG) とは、分子式C6H14O4で表される有機化合物です。
二価アルコールの一種であり、グリコールが3分子縮合した構造をしています。分子内にヒドロキシ基 (アルコール性水酸基) とエーテル結合を含みます。CAS登録番号は112-27-6です。
分子量150.174、融点-7℃、沸点285℃、密度1.1255g/mL の、常温では無色透明で粘り気がある液体です。弱い甘み臭があります。水とエタノールに溶けやすいものの、エーテルには難溶です。
トリエチレングリコールは引火点が177℃と高いものの、可燃性であるため危険物第4類引火性液体・第3石油類 (水溶性液体) ・危険等級Ⅲに指定されています。人体に対しては、皮膚に対する刺激性は強くなく、毒性もそれほど強くありません。ただし、眼に対しては刺激があり、吸入した場合には呼吸器へ刺激を与える可能性があるとされているため、注意が必要です。
トリエチレングリコールの使用用途
トリエチレングリコールの主な用途は、以下の通りです。
- 空気調湿剤
- ガス吸収剤
- 溶剤
- ブレーキ液
- セロファン柔軟剤
- 有機合成原料
- ビニルポリマーの可塑剤
- 天然ガスパイプライン
- フォトレジスト剝離液の添加物
1. 天然ガスパイプライン
二酸化炭素 (CO2) 、硫化水素 (H2S) やその他のガスの脱水に用いられています。ガスの脱水ではエチレングリコール (MEG) 、ジエチレングリコール (DEG)も用いられますが、トリエチレングリコールが蒸発損失が少ないとされ、最も広く使用されています。
2. フォトレジスト剝離液の添加物
近年注目されている用途の一つに、半導体基板製造におけるフォトレジスト剝離液の添加物があります。半導体基板における電極構造は、フォトレジストを使って光でパターニングすることによってマイクロメートルレベルでの加工が可能になっています。
パターニング後のフォトレジストはフォトレジスト剥離液で完全に流し落とす必要がありますが、剥離液にトリエチレングリコールを添加しておくことで、狙った効果を加えることが可能です。
3. その他
化粧品製造における減粘剤、香料などに使用される場合もあります。空気中にエアロゾル化されたときには消毒特性を発揮するため、空気消毒剤および消毒剤スプレーの有効成分として使用されています。
また、引火点が高い上に有毒な蒸気を発生しないことや、皮膚吸収されないという特徴があることから、化学分野では比較的取り扱いやすい有機溶剤の位置づけです。そのため、溶媒として用いられることもしばしばあります。
トリエチレングリコールの原理
図2. トリエチレングリコールと同種のグリコール類 (左下) / トリエチレングリコールの合成 (右上)
トリエチレングリコールは、モノエチレングリコール、ジエチレングリコールと性質はおおむね同じで、主要な用途も原料も同じです。グリコールの数が増えるのに従い、沸点と粘り気が増します。
トリエチレングリコールは、エチレンオキシド (オキシラン) に対して酸触媒存在下で水を作用させることにより合成されます。この反応では、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-の各種エチレングリコールが混合物で得られます。
トリエチレングリコールの種類
トリエチレングリコールは、研究開発用の試薬製品および、工業用薬品などの種類があります。研究開発用の試薬製品は、500mL , 25gなどの試薬瓶で販売されることが多いですが、1kg , 3kg , 20kgなどの大容量でも市販されています。安定であり、常温保存可能な試薬です。
工業用薬品は、調湿剤、セルロース、その他の樹脂溶剤として主に利用されます。使用スケールが大きいため、主に石油缶 (20kg)、ドラム (225kg)、コンテナ (1000L) などの荷姿で販売されています。
参考文献
https://www.nite.go.jp/
https://www.chemicoco.env.go.jp/detail.html?=&chem_id=3160
hhttps://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907051339946594