発泡樹脂とは
発泡樹脂とは、ガスを細かく混ぜ込み発泡状に成形した合成樹脂です。
基本的にいずれの合成樹脂でも発泡成形は可能ですが、価格などを考慮すると発泡成形に使われる合成樹脂は限られます。
発泡樹脂には気泡が連続している連続気泡と気泡が繋がっていない独立気泡があり、柔軟性や防音性が必要な場合には連続気泡が、断熱性能や剛性が必要な場合には独立気泡が一般的に使用されます。身近な例では梱包材などで使用される発泡スチロールも発泡樹脂の一つです。
発泡樹脂の使用用途
発泡樹脂は剛性が高くて肉厚にしてもヒケを生じにくく、デザイン性が高いため、自由曲面などが含まれた計測機器の筐体などで使用されています。
自動車では座席のクッション、ヘッドレスト、アームレスト、インパネハンドル、ドアトリムなどの幅広い内装部品に発泡樹脂が使われ、バンパー、エアスポイラー、バッテリーカバーなどの外装部品でも使用可能です。
そのほか電線を保護するためのハーネス被覆などにも用いられます。
発泡樹脂の原理
発泡樹脂は発泡セルが樹脂内部の残留応力を吸収してガス圧で樹脂を金型に押さえつけることで、スクリューから樹脂への圧力を下げるため反りや変形が低減可能です。成形品の内部に空気層を作り、材料の使用量を減らせてコストダウンにも貢献します。
発泡させる方法は化学的な発泡剤だけでなく、高圧下で液化ガスなどを溶解させて圧力を低下させたり加熱によって溶解度を低下させて気泡を生成する物理発泡などがあります。発泡処理を行う際に表面で発泡が起こると「スワール・マーク」と呼ばれる模様が発生しますが、射出前に金型内を加圧すると回避可能です。
一般的な射出成形に対して液体発泡剤を蓄えるタンクや発泡剤を注入するためのプランジャ、注入口ノズルなどが追加で必要です。
発泡樹脂の種類
1. 硬質ポリウレタンフォーム
硬質用ポリオールを使用したポリウレタンを独立気泡で発泡成形して得られます。圧縮強さが非常に大きく、変形させた際に応力を外してもほとんど戻りません。
2. 軟質ポリウレタンフォーム
ポリエステル系とポリエーテル系に分類されます。ポリエステル系は機械的性質や耐薬品性などに優れ、容易に気泡径を調整できますが、加水分解が起きやすいです。ポリエーテル系は加水分解性が低くて弾性に優れ、安価です。
3. ポリスチレンフォーム
汎用ポリスチレンを原料に用い、型内で水蒸気が予備発泡に使用されます。軽量で断熱性や緩衝性に優れています。
4. ポリエチレンフォーム
原料にリニアポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが用いられます。吸水性が低くて低温で脆性破壊が起こらず、切削のような二次加工が容易です。可撓性を有し、圧縮強度に優れています。
5. ポリプロピレンフォーム
加熱による粘度低下が急なため、発泡壁形成が難しく、架橋剤や架橋方法の選択が重要です。耐熱性が比較的高いです。
6. フェノールフォーム
レゾール型とノボラック型が用いられます。ノボラック型には熱分解型の発泡剤が使用され、フェノール型には炭化水素類が使われます。
7. PET樹脂発泡体
PETはポリエチレンテレフタラート (英: polyethylene terephthalate) を表し、押出成形法や発泡フィルム製造法が工業化されています。押出成形法では分解型発泡剤にポリカーボネートや5-フェニルテトラゾーンを用い、発泡フィルム製造法では主原料に混ぜた無機微粉末や異種ポリマーが発泡を促進します。
8. EVA架橋発泡体
EVAはエチレン酢酸ビニル共重合体 (英: Ethylene vinyl acetate) のことで、柔軟性や弾力が高く、ゴム類などの多くの材料と混合可能です。
9. その他の発泡樹脂
ポリ塩化ビニルフォーム、ポリイミドフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム、ユリアフォームなども使用されています。