天然ゴム

天然ゴムとは

天然ゴム

天然ゴムとは、JISにより「パラゴムノキから得られるシス-1,4-ポリプレン」として規格化されているゴムのことです。

そのため、天然ゴムの主な産地はパラゴムノキが植生する東南アジアやアフリカ、中南米の熱帯地域です。中でも東南アジアでの生産が生産量の約80%を占めています。

天然ゴムは、工業的には1800年代から利用されています。主に液状のゴムであるラテックス、シート状にして乾燥させたRSS、ゴムを細かく粉砕しプレス成型したTSRの3つの形態で取引されています。

RSSはTSRに比べると機械的強度が強いですが、価格も高めです。

天然ゴムの使用用途

天然ゴムの約70%は、航空機やトラック、バス、乗用車などのタイヤに使用されています。タイヤとしての耐久性を高めるために合成ゴムの一種であるSBR (スチレン・ブタジエンゴム) 、BR (ブタジエンゴム) などと混ぜて耐久性を向上させています。

このようなブレンドの効果もあり、天然ゴムは非常に高い機械的強度を示すため、大型タイヤに用いられることが多いです。タイヤ以外でもベルトやホース、防振用ゴム足などの工業製品から、糸ゴムやゴムバンド、スリッパのような履物などの民生品まで幅広く使用されています。

また、プラスチックへの添加剤として使われることもあります。

天然ゴムの特徴

天然ゴムは伸張性、反発弾性、引裂き強さ、圧縮永久歪み、耐摩耗性、耐屈曲亀裂性、粘着性などが優れており、内部発熱が低く、破壊強度が大きいという特徴を持っています。一般的な合成ゴムと同様に耐水性、耐アルコール性は高く、耐油性や耐酸性は低いです。また、耐候性、耐オゾン性も低いのが特徴です。

天然ゴムは天然素材由来であるために、合成ゴムと比べて物性のばらつきがあったり、不純物がふくまれていたりすることもあります。

天然ゴムの構造

天然ゴムは、ゴムの木に傷をつけると浸み出てくるラテックスと呼ばれる白い樹液に酸を加えて凝固させることで得られる成分であるポリイソプレン (イソプレン:CH2=C(CH3)-CH=CH2) が付加重合したポリマー) から作られます。

このイソプレン部分はcisの構造なので、分子鎖は不規則な形をとっており、結晶化はほとんど起こりません。

天然ゴムのその他情報

1. 加硫

加硫とは、硫黄を加えて加熱することです。天然ゴムを構成する分子の二重結合は時間とともに酸化反応を起こすため、経時的にゴムの弾性を失ってしまいます。

また、天然ゴムは耐熱や耐寒性などの耐久性に乏しく、そのまま用いることは困難です。そのため、天然ゴムに硫黄を5~8%加えて約140℃に加熱する処理を行うことで、二重結合部分と硫黄を反応させて分子同士を結合させ、化学的強度や機械的強度、弾性を大きくして使用しています。なお、日常的に使用している天然ゴムのほとんどは加硫ゴムです。

2. 合成ゴムとの違い

ゴムには天然ゴムのほかに、石油やナフサから生産される合成ゴムがあります。天然ゴムと合成ゴムを見た目で区別することは難しく、比重も同等のため、目視で天然ゴムか合成ゴムかを判断するのは困難です。

機械的特性においては天然ゴムが優れていますが、合成ゴムであるフッ素系ゴムやシリコン系ゴムは耐熱性や耐油性、耐候性などが高く、機械強度以外では合成ゴムの方が良い特性を示すことが多いです。

3. 資源としての天然ゴム

石油由来の合成ゴムに比べて、天然ゴムは自然由来であるため非常にグリーンな素材です。また、パラゴムノキは二酸化炭素を吸収することで天然ゴムを合成するため、間接的に地球上の二酸化炭素を利用していることになります。

パラゴムノキは植樹から約25年経つと、天然ゴムの収穫量がどんどん減少するため植え替えを行いますが、この時に伐採されたパラゴムノキは主に集成材に加工されます。

パラゴムノキの集成材は耐久性や着色性、塗装性に優れることもあり、家具やフローリングなどの用途に広く用いられています。天然ゴム自体だけでなく、天然ゴムを産むパラゴムノキも含めてグリーンな素材です。

参考文献
https://www.y-yokohama.com/csr/rubber/what/
http://cr-kobe.jp/history.html
http://www.tri210.co.jp/tokusei/nr.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です