塩化カルシウムとは
天然では南極石などごく限られた鉱石として産出し、微量ながら海水中にも含まれています。物性は無色または白色の結晶で潮解性を有し、水に溶けやすく、エタノール、アセトンにも溶けます。
塩化カルシウムの使用用途
1. 乾燥剤
塩化カルシウムは吸湿性に優れており、吸湿容量はシリカゲルの5倍程度ありますので、タンスやクローゼットなどの除湿剤として広く使われています。食品用の乾燥剤としては、潮解性がないように工夫されたものが製造されています。塩化カルシウムの吸湿は化学的吸着 (共有結合)によるものであり
活性炭やシリカゲルの物理的吸着 (ファンデルワールス吸着) とは異なります。路面に撒くことで、湿り気を与えてホコリの発生を防ぐことができるため、グランドやテニスコート・未舗装道路の防塵にも効果があります。
2. 融雪剤・凍結防止剤
塩化カルシウムは水分と反応して溶解熱 (285J/g) を発します。また、塩化カルシウム水溶液 (濃度30%) は、凝固点降下により-50℃近くになるまで凍らないため、道路の凍結防止剤、融雪剤として利用されています。他の凍結防止剤としては、塩化ナトリウムや塩化マグネシウムなどがあります。
3. 医薬品
医療の分野でも注射液、輸液などに使われています。骨粗鬆症の治療にも使用されることがあります。
4. 食品
食品添加物として認められており、アルコール飲料、清涼飲料水の硬度・pH調整やチーズ、豆腐などの凝固剤として用いられています。
5. 石油化学
塩化カルシウムは、石油化学工業においても広く使用されています。例えば、油田での採油時において、地下の水分を吸収することで、オイルリザーバー内の水分を減らし、採油効率を上げることができます。また、エチレンガスの脱水にも利用され、エチレンを高純度で取り出すことができます。
6. その他の使用用途
塩化カルシウムは石膏 (CaSO4・2H2O) の原料としても用いられます。石膏は硫酸ナトリウムなどの硫酸塩とカルシウム塩の反応によって生成しますこのように人工的に作られた石膏を化学石膏と呼びます。
また、排水のフッ素除去にも塩化カルシウムが用いられます。フッ素含有廃液に塩化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加することで、フッ化カルシウム (CaF2) として沈殿し、フッ素を除去することができます。そのほかのフッ素除去方法としては、アルミニウムを用いて水酸化物を共沈させる方法があります。
塩化カルシウムの性質
塩化カルシウムの分子量は111、比重は2.15、融点は772℃、CAS番号は10043-52-4です。溶解度は20℃のとき、水100mLに対して74.5 gです。塩化カルシウムを溶融塩電解することにより、カルシウムを単離することができます。炎色反応では濃い橙色を示します。
塩化カルシウムの種類
塩化カルシウムは水和物としても存在します。製品としては、液体としても扱われています。そのほかには、原料別、グレード別、産業別用途などの分類があります。
1. 塩化カルシウム二水和物 (CaCl2・2H2O)
塩化カルシウムの分子量は147.01、比重は0.835、融点は175.5 ℃、CAS番号は10035-04-8です。水に溶けやすく、エタノールにもやや溶けます。鉱物であるシンジャル石の主成分です。
2. 塩化カルシウム六水和物 (CaCl2・6H2O)
南極石の主成分であり、針状結晶鉱物です。三方晶系で、比重は1.7程度、融点は29.8 ℃です。低い融点から、結晶成長の教材としても用いられています。
塩化カルシウムのその他情報
塩化カルシウムの製造方法
工業的には、アンモニアソーダ法(ソルベー法)による炭酸ナトリウムの製造工程(消石灰と塩化アンモニウムを反応させる工程)で塩化カルシウムを得ています。塩酸と石灰石 (CaCO3) や水酸化カルシウム (Ca(OH)2) を反応させることでも、塩化カルシウムが得られます。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10043-52-4.html