マルトール

マルトールとは

マルトール (英: Maltol) とは、環状ケトン・エーテル・アルコール化合物です。

IUPAC名は3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン (英: 3-Hydroxy-2-methyl-4H-pyran-4-one) です。別名として、3‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐4‐ピロン (英: 3-Hydroxy-2-methyl-4-pyrone) やベルトール (英: Veltol) 、パラトン (英: Palatone) 、ラリキシン酸 (英: Larixic acid) とも呼ばれます。

天然には、カラマツの樹皮や松葉、木材のタールやオイル、小麦、大豆、バターなどに含まれており、麦芽コーヒーの製造時、薫煙凝縮物として生成されます。

マルトールの使用用途

マルトールは、主に食品分野で香料として使用されています。具体的な使用例は、パンやケーキに焼きたての香りや風味を与える食品香料や果実フレーバーなどです。フルーツフレーバーとしては、30ppmまでの濃度で使用され、5~75ppmの濃度で使用するとマルトールは食品の甘味を増強します。その他の添加される製品は、ビールなどのアルコール飲料や動物の飼料などです。

トドマツの葉からの抽出物は、香料原料としても使用されており、通常3〜8%のマルトールを含みます。この抽出物は、カラメルノートを持つアロマ組成物や、例えばフルーツフレーバー (特にストロベリーフレーバー組成物) として味の増強剤として使用されてきました。

マルトールは、一般に、本質的に無毒で刺激性のない物質とみなされていますが、WHOは、マルトールの1日許容摂取量を1 mg/kg体重までとしています。

マルトールの性質

化学式はC6H6O3で表され、分子量は126.11です。CAS番号は118-71-8で登録されています。融点は161.5°Cで、93℃で昇華する常温で白色の結晶です。

特徴的なキャラメルのような香りを持ち、希薄溶液ではフルーティーなイチゴ様の香りを呈します。200ppmほどで、甘く、キャラメルや綿菓子、フルーティーでジャムのようなイチゴのニュアンスの味を示します。エタノールやプロピレングリコールなどのアルコール、クロロホルムベンゼン、エーテル、アセトンなどに可溶です。水へは、15℃で10.9 mg/mLほど溶けます。

酸性・アルカリ性の程度を表すpHは5.3 (0.5%の水溶液) 、酸解離定数 (pKa) は8.6です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標の1つです。pKaが小さいほど強い酸であることを示します。

マルトールのその他情報

1. マルトールの製造法

マルトールは主に、ブナの木やその他の木材のタール、松葉、チコリ、カラマツの若木の樹皮などの天然に存在するものから単離されます。また、フルフラールまたはピぺリジンを出発原料とする多段階合成やストレプトマイシン塩のアルカリ加水分解によっても生成可能です。

クロロホルムやトルエン、50%のエタノール水溶液などから再結晶により精製できます。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
強酸化剤は、マルトールの混触危険物質です。取り扱い時または保管時に、接触させないよう気を付けてください。取り扱う際は、保護手袋と長袖の作業衣、側板付き保護眼鏡など適切な保護具を着用します。

必要に応じて、粉塵マスクなどを使用してください。使用後は、手や顔を洗います。

火災の場合
熱分解で、一酸化炭素や二酸化炭素などの刺激性で有毒なガスと蒸気を放出するおそれがあります。消火の際は、水噴霧や泡消火剤、粉末消火剤、炭酸ガス、乾燥砂などを使用します。棒状放水は行わないでください。

保管する場合
マルトールは光により変質する恐れがあります。容器を密閉し、直射日光や熱、火花、裸火のような着火源を避け、換気の良い冷所で保管してください。保管場所は施錠します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/118-71-8.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0108-0611JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/8369

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