硫酸マグネシウムとは
硫酸マグネシウム (英: Magnesium Sulfate) とは、白色結晶〜結晶性粉末の金属塩です。
別名として、特に7水和物はエプソム塩やエプソムソルト (英: Epsom salt) と呼ばれます。
硫酸マグネシウムの使用用途
硫酸マグネシウムは、安全性の高い化学物質として広く使用されています。
1. 肥料
農薬としての用途には、1水和物が主に使用されます。植物が光合成する際に必要なクロロフィルには硫酸マグネシウムが含まれているため、硫酸マグネシウムを肥料に混合させることで、植物の成長を補助できます。
硫酸マグネシウムの利点は、他のマグネシウム土壌改良剤よりも溶解性が高いことです。また、水溶液のpHはほぼ中性であるため、散布しても土壌pHに大きく影響しません。
2. 入浴剤
欧米では、硫酸マグネシウムは入浴剤として古くから使用されてきました。温熱効果や痛みを和らげる効果が期待されています。
3. 下剤・浣腸剤
硫酸マグネシウムは、速効性のある塩類下剤です。医薬用として古くから用いられており、腸内の水分吸収を抑えます。さらに、水分を腸内に集約し、便を軟化させて排便を促す作用があります。
マグネシウム中毒は、硫酸マグネシウムの重篤な副作用の1つです。だるさや筋力の低下、息苦しさ、眠気、熱感、血圧降下などが症状として現れます。大量服用時は、上記の症状に注意してください。
4. 有機合成化学
硫酸マグネシウムは水との親和性が高いことから、有機化学合成実験において乾燥剤として使用されます。反応後の後処理時に、有機溶剤相に添加することで、水分の除去が可能です。硫酸ナトリウムや硫酸カルシウムなどの無機硫酸塩も同様に使用できます。
5. その他
硫酸マグネシウムは、海水中に含まれる成分の1つです。豆腐を凝固させるにがり中にも少量含まれています。
低マグネシウム血症や不整脈、子癇などに対する医薬品、食品添加物、飼料添加物としても使用されます。
硫酸マグネシウムの性質
無水物の化学式はMgSO4で表され、分子量は120.37です。CAS番号は7487-88-9として登録されています。
融点は1,124°Cで、融解と同時に分解します。吸湿性を持つ無臭の化合物で、水に溶けやすく、エタノールに溶けにくく、アセトンやジエチルエーテルにはほとんど溶けません。水と反応し熱を放出します。
酸性・アルカリ性の程度を表すpHは5.0〜8.0 (50g/L、25℃) です。
硫酸マグネシウムの種類
無水の硫酸マグネシウムは不安定なため、自然界では通常、水和物として存在します。水和物としては、硫酸マグネシウム1に対し、1〜11の水分子が結合したものが知られています。
自然界では7水和物が最も一般的です。鉱物としてエプソマイト (英: Epsomite) と呼ばれます。7水和物のCAS登録番号は、10034-99-8です。7水和物を加熱していくと120℃で1水和物に、250℃で無水物が得られます。
硫酸マグネシウムのその他情報
1. 硫酸マグネシウムの製造法
硫酸マグネシウムは、天然資源から直接採取可能です。また、硫酸と酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムを反応させることでも、硫酸マグネシウムを合成できます。
2. 取り扱い及び保管上の注意
取り扱う場合の対策
局所排気装置がある場所で使用してください。使用の際は、個人用保護具を着用します。
火災の場合
熱分解により、刺激性で有毒なガスや蒸気を放出することがあります。消火には周囲の環境に適したものを使用してください。
皮膚に付着した場合
皮膚に付着しないように、保護衣や保護手袋を着用します。皮膚に付着してしまった場合は、すぐに大量の水と石鹸で洗い流します。症状が続く場合は、医師に連絡してください。
眼に入った場合
使用時は必ず保護メガネまたはゴーグルを着用してください。万が一眼に入った場合は、コンタクトレンズは外し、水で数分間注意深く洗浄します。直ちに、医師の手当てを受けてください。
保管する場合
ポリエチレンまたはポリプロピレン製の容器に入れて密閉します。直射日光の当たらない、換気のいい涼しい場所に施錠して保管してください。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0113-0041JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Magnesium-sulfate