塩化カリウムとは
無色の結晶または白色の結晶粉末です。塩加、塩化カリ、塩化加里とも記載されます。
工業的に塩化カリウムは、カリ岩塩 (英: Sylvite) 、カーナライト、シルビナイトなどの天然鉱石から精製可能です。製造法として、連続溶解法 (英: continuous melting method) や浮遊選鉱法 (英: flotation method) などがあり、高純度に精製されたものは潮解性を示しません。
塩化カリウムの使用用途
塩化カリウムは安全性が高く、食品添加物としての使用が認められています。具体的には、食塩 (塩化ナトリウム) の代替物として調味料や減塩食品、清涼飲料水など多くの食品に使用可能です。また、必須ミネラルのカリウム摂取を目的としてサプリメントも製造されています。
医療分野でも、低カリウム血症時のカリウム補給剤 (経口薬、点滴液) として用いられています。農業の分野では肥料として使うことが可能です。さらに、農作物の殺菌に使用される電解次亜塩素酸水は、塩化カリウム水溶液を電気分解して作られています。
塩化カリウムを電気分解すると、水素や塩素とともに、水酸化カリウムを生成します。水酸化カリウムは石鹸などの原料になるため、化学原料として塩化カリウムを用いることが可能です。
塩化カリウムは、天然ガスや石油を掘る際に、掘削泥水 (英: Drilling fluid) としても利用されます。粘土の膨潤や分散をカリウムイオンが抑制でき、泥岩層の切削に有用です。KClポリマー泥水と呼ばれ、1980年ごろに開発された方法です。
塩化カリウムの性質
塩化カリウムの化学的な性質は、塩化ナトリウムに似ています。水に溶けやすく、極性溶媒には吸熱的に溶解します。エタノールやジエチルエーテルにはほとんど溶けません。
融点は776°C、沸点は1,505℃です。味は塩辛く、独特の苦みがあります。不燃性で有害性が低いです。消防法や毒物および劇物取締法の適用は受けていません。ただし、高温になる場所での保管は注意が必要です。
塩化カリウムの構造
塩化カリウムはカリウムの塩化物であり、化学式はKClです。水溶液中では、塩化物イオン (Cl–) とカリウムイオン (K+) に電離しています。pHはおよそ7です。
結晶格子は、塩化ナトリウム型構造を取っています。配位数は6で、カリウムと塩素の距離 (K-Cl) は0.314nm、格子定数はa = 6.278Åです。モル質量は74.551g/molで、密度は1.987g/cm3です。
塩化カリウムのその他情報
1. 塩化カリウムの製法
塩化カリウムは、塩酸と水酸化カリウムの中和反応で生成します。工業的には鉱産物を精製しています。精製方法の1つは、溶解度の差を用いるものです。水に混合物を溶かして、水を蒸発させながら、連続的に結晶化させます。しかし、加熱のエネルギーが大きく、コストが高いことが欠点です。
よりコストを抑えたい場合は、浮遊選鉱法がおすすめです。まず、混合物に飽和食塩水を加えます。そして、懸濁液へ空気を吹き込んで、選択的に塩化カリウムの結晶を気泡へ付着させて、泡をすくい取ります。底に沈殿している塩化ナトリウムの結晶も回収可能です。
2. 天然に存在する塩化カリウム
植物はカリウムを栄養素にしています。そのため、海藻を燃やして生じる藻塩や内陸部の植物を燃やして生じる灰塩などに、塩化カリウムが含まれています。それに加えて、海塩を作るときに出るにがりを構成する成分の1つです。
自然では、カリ鉱石として産出されます。内陸に閉じ込められた塩湖や海水から析出して鉱床を形成している以外にも、火山の噴気から結晶が得られます。日本での主要な産地は千葉です。海水中に塩化カリウムは、0.08%ほど含まれています。海草からも抽出できますが、日本は塩化カリウムの大半を輸入しています。