塩化マグネシウム

塩化マグネシウムとは

塩化マグネシウムとは、化学式がMgCl2・6H2Oである無機化合物で、水酸化マグネシウムと塩酸を中和して得られる塩です。

名前を省略して、塩マグなどとも呼ばれます。海水から食塩の主成分である塩化ナトリウム (NaCl) を物理的に除いた後の液体を苦汁、にがりと呼びますが、この主成分が塩化マグネシウムです。

製塩の際に副生する苦汁を原料に作られるものと、四塩化チタンから金属チタン (Ti) を製造する際に副生するものがありますが、前者は6水和物 (MgCl2・6H2O) で、後者は無水和物 (MgCl2) です。

塩化マグネシウムの使用用途

塩化マグネシウムを主成分とする苦汁は、豆腐の凝固剤として利用されています。塩化マグネシウムは土木、建築分野では、道路の凍結防止剤、木材の防腐剤、耐火材、マグネシアセメントの原料などに使用され、医薬、医療分野では緩下剤、人口透析液、輸液などに有用です。

塩化マグネシウムの無水和物は、主に金属マグネシウムの製造に使われます。また、吸湿性が非常に高く乾燥剤として使用されるほか、吸湿時に発熱する性質を利用して発熱剤としても使われています。そのほか、触媒の原料も用途の1つです。

塩化マグネシウムの性質

数種の塩化マグネシウム水和物が存在しますが、工業的に製造されている主なものは、常温で最も安定な6水和物 (MgCl2・6H2O) と無水和物 (MgCl2) です。

1. MgCl2・6H2O

分子量が203.33、比重が1.569の潮解性をもつ白色結晶です。水への溶解度は160g/100mlで、アルコールにも溶解します。

加熱すると無水和物にならずに加水分解し、約200℃で塩化水素 (HCl) を発生して、塩化水酸化物 (Mg(OH)Cl )になります。また、約600℃でマグネシア (MgO) に変化します。

2. MgCl2

分子量が95.21、比重が2.325の潮解性をもつ白色結晶です。融点は714℃、沸点は1410℃です。水への溶解度は54g/100mlで、アルコールにも溶解します。水に溶解する際にはかなり発熱し、発熱で塩化水素を発生する可能性があります。

塩化マグネシウムのその他情報

塩化マグネシウムの製造方法

工業的には海水から食塩 (塩化ナトリウム) や塩化カリウムを分離した後の苦汁 (にがり) を原料に製造されています。

1. 苦汁からの塩化マグネシウム (MgCl2・6H2O) 製造
苦汁に含まれている成分の溶解度の差を利用して、最終的に塩化マグネシウムを得る方法です。苦汁には臭化物 (Br) が0.2~0.8%ほど含まれているため、まずこれを除去します。

臭素除去した後の苦汁に塩化カルシウムを入れ、硫酸塩成分を硫酸カルシウムとして析出させ、これを除去します。脱硫した液を加熱濃縮すると塩化カリウムが析出してくるので、これを分離します。

塩化カリウムを分離した後の液体を冷却すると、KCl・MgCl2・6H2Oの結晶が析出されるため、これを分離します。結晶を分離した後の液体をさらに濃縮した後、放冷すると塩化マグネシウムの結晶が析出し、これを分離することで塩化マグネシウム (MgCl2・6H2O) が得られます。

2. 6水和物の脱水による無水和物の製造
塩化マグネシウムの無水和物 (MgCl2) は6水和物 (MgCl2・6H2O) の脱水で得られますが、そのまま加熱すると塩酸が発生してマグネシアが生成する反応が起こります。この反応を起こさないように、塩酸ガス中で加熱したり、塩化アンモニウムを添加して脱水したりするなどの方法をとり、塩化マグネシウムの無水和物 (MgCl2) が得られます。

3.チタン製錬の際の塩化マグネシウム副生
金属チタンの製錬にはクロール法と呼ばれる方法で行われます。クロール法とは、酸化チタンを原料に四塩化チタンにした後、金属マグネシウムで還元してスポンジ状の金属チタンを得る方法です。

四塩化チタンは酸化チタンとコークスを炉に入れて塩素ガスを流し1,000℃に加熱して得られます。次に四塩化チタンの液体を800℃で溶解したマグネシウムに滴下すると、四塩化チタンは金属チタンに還元されます。この反応の副生物として塩化マグネシウム (MgCl2) が得られます。

参考文献
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/dl/s1125-8e.pdf

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