フマル酸

フマル酸とは

フマル酸素の構造

図1. フマル酸素の構造

フマル酸は最も単純な不飽和ジカルボン酸であり、自然界に広く存在する物質です。

無色の結晶粉末であり臭いはありませんが、強い酸味を持ちます。工業的には、主にフマル酸の幾何異性体であるマレイン酸を異性化することで製造されます。

フマル酸の使用用途

1. 殺菌剤としての利用

本化合物は殺菌力を有しているため生鮮食品の殺菌剤として利用されています。 その作用機作は以下の通りです。

◇フマル酸の殺菌剤としての作用機作

  1. カルボキシル基が非解離の状態で菌体内に取り込まれる。
  2.  細胞質中でカルボキシル基が解離する事で、細胞質のpHが低下する。
  3. 上記②の結果、細胞質中の酵素活性が低下し、代謝異常などを誘発する事で菌が死滅する。

2. 食品業界、畜産業界、医療分野での利用例

フマル酸は食品添加物としての安全性が認められており、酸味剤、膨張剤、pH調整剤、調味料などに使用されています。畜産・農業の分野では飼料の添加物、植物の殺菌・殺藻剤として使用されています。また、工業の分野では合成樹脂や染料の原料として利用さています。医療の分野では、フマル酸から作られるフマル酸エステルが乾癬(かんせん)治療に効果があるとして研究が進められています。

3. 生体内での役割

クエン酸回路におけるリンゴ酸の反応

図2. クエン酸回路におけるリンゴ酸の反応

フマル酸は酸素呼吸を行う生物のエネルギー生産過程で重要な役割を担っています。具体的には、クエン酸回路において、コハク酸から生成され、リンゴ酸へと変換される中間体として存在しています。

フマル酸の性質

1. 名称
和名:フマル酸
英名:fumaric Acid
IUPAC名:(2E)-but-2-enedioic acid

2. 分子式
C4H4O4

3. 分子量
116.07

4. 融点
300~302℃(封管中)

5. 溶媒溶解性
エタノールに可溶、水に難溶、ベンゼンに不溶。

フマル酸のその他情報

フマル酸とマレイン酸の化学的性質の違い

フマル酸には幾何異性体が存在します。トランス体がフマル酸であり、シス体がマレイン酸です。

フマル酸とマレイン酸の構造

図3. フマル酸とマレイン酸の構造

興味深い事に、これらの化合物は化学的性質が大きく異なります。具体的には、トランス体であるフマル酸は、マレイン酸に比べて分子内脱水縮合をしにくく、また、水への溶解度もマレイン酸と比べて非常に低いです。このような性質の違いは、これらの異性体における二つのカルボキシル基の立体的な位置関係で説明できます。その原理については以下の記事で詳しく説明しているので参考になさって下さい。
【2023年版】マレイン酸 メーカー5社一覧

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