ニトロメタン

ニトロメタンとは

ニトロメタンとは、有機化合物の1種で、化学式CH3NO2で表される化合物です。

最も単純なニトロ化合物で、CAS登録番号は、75-52-5です。抽出、反応溶媒、洗浄溶媒など、さまざまな工業的用途を持ちます。

歴史的には、1950年にニトロメタンを載せた貨物列車が爆発したことで、初めてニトロメタンが爆発物であることが知られ、現在では安定剤を添加した状態で運搬されています。爆発物として広く知られているTNTよりも、爆発のエネルギーが大きい物質です。

ニトロメタンの使用用途

ニトロメタンの主な使用用途は、 溶剤、助燃剤、界面活性剤、爆薬、医薬品、殺虫剤、殺菌剤等の原料です。原料以外では、抽出、反応溶媒、洗浄溶媒などとしても工業的に広く使用されます。

有機合成においては1炭素増炭試薬として使われたり、有機溶媒として用いられたりする物質です。具体的な反応としては、ニトロアルカンとアルデヒドやケトンを縮合してβ-ニトロアルコールを得るニトロアルドール反応 (ヘンリー反応) や不飽和カルボニル化合物に対して求核剤を付加するマイケル反応などに用いられます。

また、ニトロメタンは燃料としても広く利用されています。ニトロメタンはガソリンよりも少ない酸素で大きな出力を生み出すことができるため、ドラッグレースなどのモータースポーツで燃料として利用されています。

ニトロメタンの性質

ニトロメタンの基本情報

図1. ニトロメタンの基本情報

ニトロメタンは、分子量61.04、融点-28℃、沸点101℃であり、常温では無色の粘性のある液体です。特異臭を呈します。密度は1.13g/mLであり、水に不溶ですが、 アルコール、エーテル、ジメチルホルムアミドに溶解します。酸解離定数pKaは10.2であり、弱いながらも酸性プロトンを持っています。

ニトロメタンの種類

ニトロメタンは、一般的には主に研究開発用試薬製品として販売されています。容量の種類は、25mL、100mL、500mL、500gなどであり、実験室で取り扱いやすい小容量の製品が中心です。

通常、室温で取り扱い可能な試薬製品として扱われます。前述の各種危険性のため、法令による規制を受ける化合物であり、法令を遵守した取り扱いが必要です。

ニトロメタンのその他情報

1. ニトロメタンの合成

ニトロメタンの合成

図2. ニトロメタンの合成

ニトロメタンは、工業的には、プロパン硝酸を350-400℃で反応させて生産されています。この反応では、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパンの4つのニトロアルカンを同時に得ることが可能です。

この反応の反応機構では、対応する硝酸エステルのホモリシスによって生じるCH3CH2CH2O型のアルコキシラジカル類を含むフリーラジカルが関与しています。

実験室的製法では、クロロ酢酸ナトリウムと亜硝酸ナトリウムを用いた合成が一般的な方法として挙げられます。

2. ニトロメタンの化学反応

ニトロアルドール反応

図3. ニトロアルドール反応

ニトロメタンの化学反応で有名なものの1つが、ニトロアルドール反応 (ヘンリー反応) です。この反応では、塩基を用いてニトロメタンを脱プロトン化した後、アルデヒドまたはケトンを縮合させ、β-ニトロアルコールが得られます。

本反応では形式や機構がアルドール反応の延長線上にあり、ニトロ基との共鳴によって安定化されたカルバニオンがカルボニル基へ求核的に付加します。生じたβ-アルコールは脱水を受けるとニトロアルケンとなり、これはマイケル付加やネフ反応の基質となる有用な化学種として合成上有用です。

3. ニトロメタンの安全性情報

ニトロメタンと硝酸アンモニウムの混合物は爆薬として用いられます。純粋なニトロメタンはそれほど衝撃に敏感ではないですが、危険性を減らすために安定剤が添加されます。また、引火性液体及び蒸気でもあります。

人体に対しても有毒な物質であり、軽度の皮膚刺激、強い眼刺激、発がんのおそれの疑い、肝臓や腎臓の障害のおそれ、呼吸器への刺激のおそれ、などの危険性が指摘されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0886.html

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