イソプロテレノールとは
図1. イソプロテレノールの基本情報
イソプロテレノールとは、化学構造にイソプロピルアミンやカテコールの骨格を有する医薬品の一つです。
別名として、イソプレナリン (英: Isoprenaline) とも呼ばれます。主に房室ブロック、徐脈、気管支喘息などの治療に使用可能です。
臓器の細胞表面に存在する受容体に対して作用する神経伝達物質に似た構造を持っており、神経伝達物質の模倣剤として用いられます。α受容体に対して作用せず、β-アドレナリン受容体にほぼ独占的に作用します。
イソプロテレノールの使用用途
イソプロテレノールは、主に医薬品分野で使用されます。β-アドレナリン受容体に選択的に結合し、交感神経を刺激します。交感神経が活性化して、心臓の電気信号が強まり、心拍数の増加および末梢血管の拡張のような効果が得ることが可能です。この効果により不整脈などの心臓障害の治療にも用いられます。
また、交感神経の活性化により平滑筋に対する弛緩効果も得られるため、喘息や気管支痙攣の治療で気管支拡張薬としてイソプロテレノールを使用可能です。
イソプロテレノールの性質
室温でイソプロテレノールは、白色の粉末あるいは結晶として固体状態で存在します。イソプロテレノールの吸収後の半減期は、およそ2分です。また、イソプロピルアミノ基やカテコールの水酸基などを有しています。化学式はC11H17NO3で、分子量は211.258g/molです。
イソプロテレノールはカテコールとアミンを持っている化合物です。カテコールアミン (英: catecholamine) は、神経伝達物質や関連薬物の基本骨格になっています。
イソプロテレノールのその他情報
1. イソプロテレノールによる効果
イソプロテレノールのトレースアミン関連受容体1型 (英: trace amine-associated receptor 1) 作動効果は、内因性微量アミンと似た薬力学的効果を有しています。ただし、投与経路によりますが、吸収後の半減期は短いです。そのため、中枢神経系のトレースアミン関連受容体1型刺激による、持続的向精神薬作用を持っていません。
循環器への非選択的作用は、細動脈の中膜にあるβ1受容体やβ2受容体への作用によります。β2受容体の刺激で細動脈平滑筋を弛緩し、血管を拡張可能です。心臓への陽性変力作用や陽性変時作用があり、収縮期血圧を上げますが、血管拡張効果により拡張期血圧が低く保たれます。結果として全体では、平均動脈圧が低くなります。
2. イソプロテレノールの構造活性相関
イソプロテレノールでβ受容体の選択性を決めているのは、イソプロピルアミノ基です。そして、カテコールの水酸基が露出しているため、代謝酵素への感受性が維持されていると言われています。
3. 喘息治療薬としてのイソプロテレノール
図2. イソプロテレノールの関連物質
イソプロテレノールは、交感神経のβ1受容体やβ2受容体の作動薬です。β2選択的な作動薬のサルブタモール (英: Salbutamol) が開発されるまで、広く喘息治療薬として利用されていました。
4. イソプロテレノールの副作用
イソプロテレノールによる重大な副作用は、血清カリウム値の低下です。注射剤では心筋虚血も、副作用として挙げられます。
5. イソプロテレノールの関連物質
図3. カテコールアミンの具体例
イソプロテレノールの持つカテコールアミンは、数多くの生体物質の骨格に使用されています。具体例として、ドーパミン (英: dopamine) やレボドパ (英: L-3,4-dihydroxyphenylalanine) だけでなく、アドレナリン (英: adrenaline) やノルアドレナリン (英: noradrenaline) などが挙げられます。