スライドブッシュとは
スライドブッシュは、機器のスライド部でシャフトなどに沿って直線運動を行う円筒形の機器部品です。
ブッシュとは、軸や筒状の部材等にはめ込み、緩衝や隙間を埋める目的で使用する機構部品を指します。鋼球の転がりを利用するため、低い摩擦で高い精度の直線運動が可能です。ブロック形、開放形、フランジ形、グリースニップル形などさまざまな形状がありますが、機構そのものは非常にシンプルです。
スライドブッシュの使用用途
スライドブッシュは、自動記録装置、測定器、OA機器とその周辺機器、精密機器、食品機器、工具研削盤、自動ガラス切断機など、さまざまな分野で幅広く使用されています。
日常生活での使用例には車両のスライドドアがあります。軸の平行性が正確でなくてもスライドブッシュが自動的に調整してくれるので開閉がスムーズです。液体充填機では、転がり運動で引っかかりのリスクを低減するだけでなく、がたつきを抑える効果を発揮します。
スライドブッシュの原理
スライドブッシュは、内蔵した複数の鋼球の転がり運動を利用して、シャフトと呼ばれる円筒形の軸上を無限に直線運動する直動機構です。これにより低い摩擦と高い精度を同時に実現します。
ボールの配列の違いやシャフトの形状によりリニアブッシュ、ボールスプライン、ミニチュアボールガイドに分類され、それぞれ以下の特徴で動作します。
- リニアブッシュ:鋼球が直線状に配列され、シャフトと点で接触して軽く滑らかに摺動する。シャフトとの接触面が狭いため許容荷重が小さい。
- ボールスプライン:スプライン加工が施されたシャフトの溝で鋼球が回転しながら摺動する。接触面積が大きいため、回転方向へのズレが生じず許容荷重が大きい。
- ミニチュアボールガイド:互い違いに鋼球が配列されている。ガタつきが低減される。
スライドブッシュの種類
1. 形状による分類
スライドブッシュには、用途に応じたブロック形、開放形、フランジ形、グリースニップル形など多様な形状があります。
- ブロック型:一般的なスライドブッシュの形状で、取り付けに応じた形状選択が可能。
- 開放形:ハウジングに開放部がある。シャフトを下面から支えるため耐荷重性があり、ロングストロークでもたわみの影響が抑えられる。
- フランジ形:取り付け面と密着するため高い剛性と安定性がある。外力による振動や変形を抑制し、精度の高い直線運動が実現可能。
- グリースニップル形:定期的にグリースを補給できるため潤滑管理が容易。摩擦を低減して部品の寿命を延ばす。
2. 材質による分類
形状だけでなく、材質も高耐食性、スチール製、樹脂製などがあり、環境に適した選択が重要です。
外筒表面に処理を施す、あるいは耐食仕様のマルテンサイト系ステンレス鋼を採用すれば、さまざまな使用環境に対応できます。ダブルリップシール付きの製品では、防塵性が高まりグリス漏れの低減も可能です。樹脂製なら質量が50~30%軽減するだけでなく、静音も実現します。
スライドブッシュのその他情報
使用上の注意点
スライドブッシュの摺動性能や耐環境性を維持するため、使用・保守する際の注意点を把握することが大切です。まず、異物の付着を防ぐため、製品を分解しないことや、落下や衝撃により破損させないことに注意する必要があります。樹脂製やゴム製部品を使っている場合は、変形などのリスクがあるため使用温度が80度を超えないようにします。
シャフトを傾けたまま挿入すると、異物が付着したりスライドブッシュが落下する可能性があります。また、ストローク幅が極端に狭い場合は損傷や摩耗のリスクがあるので、使用前に鋼球にグリスを塗布します。ハウジングやベースの剛性や固定用ボルトの強度にも十分注意し、軸受性能の劣化を防止します。