アラニン

アラニンとは

アラニン (英: Alanine) とは、タンパク質を構成するアミノ酸の1種です。

IUPAC名は (2S) -2-アミノプロピオン酸 (英: (2S) -2-aminopropanoic acid) であり、略号はAlaもしくはAです。アラニンは、肝臓で作られる非必須アミノ酸で、体内ではピルビン酸から合成されます。

エネルギーの生成や糖新生、脂肪酸の合成に用いられ、アセトアルデヒドを分解するためアルコールの代謝にも寄与します。

アラニンの使用用途

1. 食品添加物

うま味と甘味を持つため、食品添加物として使用されます。添加される食品に対し、酸味や塩味を加えたり、苦味の低減が可能です。

また、他の調味料との相乗効果で、うま味向上も期待できます。水産練り製品や珍味、漬物、惣菜、清酒の味つけなどに用いられます。アラニンは二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解するため、アルコール摂取後のサポート食品にも利用される添加剤です。

その他、下痢などによる水分不足を補ったり、皮膚のターンオーバーを促進する効果があるとされています。

2. 化粧品添加剤

薬効成分を持つ化合物の安定化などを目的に、経口薬や外用薬、注射剤の添加剤として使用されます。

アラニンの性質

ここでは、L-α-アラニンについて説明します。化学式はC3H7NO2で表され、分子量は89.09です。CAS番号は56-41-7 で登録されています。

アラニンは融点250°C (昇華) 、297°Cで分解し、常温で白色粉末、密度1.432g/ml (22℃) の固体です。水中で再結晶すると、斜方晶結晶が得られます。無臭で甘味を持ちます。エタノールには若干溶け、ジエチルエーテルアセトンなどの有機溶媒にはほとんど溶けません。水には、25 °Cで164g/Lとよく溶けます。

酸性・アルカリ性の程度を表すpHは2.7、酸解離定数 (pKa) は2.34と9.69 (25°C) です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標の1つです。pKa が小さいほど強い酸であることを示します。

アラニンの種類

アラニンというと、通常L-α-アラニンを指しますが、その他D-α-アラニンやβ-アラニンも存在します。D-α-アラニンの性質は、L-α-アラニンと同様です。CAS番号は338-69-2で登録されています。

2種類の鏡像異性体 (エナンチオマー) が等量存在するラセミ体のD,L-アラニンは、CAS番号は302-72-7で登録されています。β-アラニンは、アミノ基が置換する位置がα-アラニンとは異なり、エナンチオマーを持ちません。略号はβ‐Alaです。融点は197〜202°Cで、常温で無色〜白色の針状結晶です。

水には25°Cで545g/Lとよく溶け、有機溶媒には溶けません。酸性・アルカリ性の程度を表すpHは2.7、酸解離定数 (pKa) は3.63です。CAS番号は107-95-9で登録されています。

アラニンのその他情報

1. アラニンの製造法

L-アラニンは、微生物が持つ酵素、アシラーゼによるタンパク質の非対称加水分解によって製造されます。また、Pseudomonas dacunhaeなどの固定化微生物を用いたL-アスパラギン酸の酵素的脱炭酸によっても調製可能です。

D,L-アラニンは、シアン化ナトリウム存在下でのアセトアルデヒドと塩化アンモニウムの縮合によるストレッカーアミノ酸合成 (英: Strecker Amino Acid Synthesis) 、または2-ブロモプロパン酸へのアンモニアの付加により調製できます。

ストレッカーアミノ酸合成とは、アルデヒドとアンモニア、シアン化水素からアミノ酸を合成する方法です。最初に、アルデヒドとアンモニアが反応しイミンを形成し、シアン化物イオンがイミンを求核攻撃することでアミノニトリルが生成します。最後に加水分解され、目的のアミノ酸を合成することが可能です。

β‐アラニンは、アクリル酸またはアクリロニトリルとアンモニアから合成されます。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
強酸化剤は、アラニンの混触危険物質です。取り扱う際および保管の際に、接触を避けてください。取り扱う際は、必ず保護手袋と側板付きの保護メガネ、長袖の保護衣を着用し、局所排気装置内で使用します。

火災の場合
燃焼により、一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) 、窒素酸化物 (NOx) へと分解し、有毒なガスや蒸気を生成します。水や二酸化炭素、粉末消火剤、泡、砂などを用いて消火してください。

皮膚に付着した場合
皮膚に付いた際は、石けんと水で十分に洗浄してください。皮膚に刺激がある、または何かしらの症状が続く場合は、医師に連絡します。

眼に入った場合
眼に入った際は、眼を傷つけないよう気を付けながら、水でしばらくの間洗浄します。直ちに、医師の診察を受けてください。

飲み込んだ場合
飲み込んだ場合は、すぐに口をすすぎます。すぐに、毒物管理センター、もしくは医師に連絡してください。

保管する場合
ポリエチレンやポリプロピレン、ガラス製の容器に密閉し、冷暗所に保管してください。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-0104JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Alanine
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/D-alanine
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/beta-Alanine
https://cosmetic-ingredients.org/skin-conditioning-miscellaneous/62/

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