クエン酸

クエン酸とは

クエン酸とは、柑橘類の果実などに含まれる有機酸で、3個のカルボキシ基 (-COOH) を持つヒドロキシ酸の1種です。

無色透明または白色の固体で、水分子を含まない無水結晶と1分子の結晶水を持つ一水和物があります。どちらも無臭で、酸味成分の味を持つのが特徴です。

クエン酸は、炭水化物、脂肪、タンパク質などを分解してエネルギー物質とするTCA回路(クエン酸回路) の途中で現れ、重要な働きをします。また、抗菌作用やカルシウムを吸収する性質などもあります。

クエン酸の使用用途

クエン酸は、その精製純度によって医薬用、食用、工業用、化粧品用などの用途に幅広く利用されています。

1. 医薬用

医薬用のクエン酸は、緩衝・矯味・発泡の目的で、調剤の原料として使用されます。クエン酸自体が、日本薬局方クエン酸水和物として薬用に使用されることも多いです。

2. 食用

食用のクエン酸は、フルーツ系の酸味を与える酸味料や、ビタミンCの安定化剤 (酸化防止剤) として、さまざまな食品に添加されています。また、疲労回復、筋肉痛の軽減、食欲増進、肝機能改善などの効果があるサプリメントとしても使われています。

さらに、クエン酸は酸性であることから、pH調整剤としても有用です。食品のpHを調整することで、微生物の増殖を抑制し、保存性を高められます。

3. 工業用

工業用のクエン酸は、カルシウムを吸収する性質から、水垢などの原因となる炭酸カルシウムの清掃用に使用されています。アルカリ性の汚れを中和して落とす性質もあり、石鹸カスなどを溶解し、除去することが可能です。

また、浴用剤やバスボムなどにも利用されています。

4. 化粧品用

化粧品用のクエン酸は、酸性の性質を利用したpH調整剤、pH緩衝や、収れん作用を目的に利用されます。皮膚のpHは弱酸性 (pH4.5-6) であり、pHが変化すると肌への刺激が大きくなります。pH調整剤を製品に加えることで、pHを弱酸性に保つことが可能です。

収れん作用とは、穴を引き締めて、汗や皮脂の過剰分泌を抑制する効果のことです。クエン酸の他に、塩化アルミニウム、ミョウバン、硫酸亜鉛などの酸性物質が一般に利用されています。

クエン酸の性質

1. 物理的性質

クエン酸は、化学式C3H4 (OH) (COOH) 3で表わされ、分子量192.13、白色無臭の結晶または結晶性粉末です。

引火点100℃、融点153℃、沸点がなく、分解温度175℃、発火点1010℃、爆発範囲下限1.9vol/%、上限4.8vol/%の可燃性物質です。密度は1.665g/cm3、2%水溶液のpHは約2.0です。

2. 化学的性質

溶解度59.2g/100g (20℃) であり、水に極めて溶けやすく吸湿性が高いです。また、エタノールに溶けやすい性質を持ちます。

通常の取扱条件においては安定ですが、強酸化剤や強アルカリ剤と接触すると、激しく反応することがあります。また、水溶液は酸性のため、金属を腐食する可能性も高いです。

175℃で分解し、アコニット酸に変化します。粉末状態で空気と一定割合で混合すると、粉塵爆発の恐れがあります。

クエン酸のその他情報

1. クエン酸の安全性

クエン酸は食用、化粧品用途にも利用されることから、非常に安全な化合物です。一方で、強い眼刺激性と多量の吸引による呼吸器への刺激性があるため、取扱いの際は、眼に入らないよう、また多量に吸引しないよう注意が必要です。

なお、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法、消防法、化学物質管理促進法 (PRTR法) には該当しません。

2. クエン酸の取扱方法

クエン酸を取り扱う際は、保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用し、換気設備のある場所で作業を行います。取扱後は、よく手を洗うことが重要です。

保管場所は、製品が汚染されないよう清潔に保ち、直射日光、高温多湿を避けて保管します。また、吸湿性が高いため、容器を密閉し乾燥した場所に保管し、吸湿を避けなければなりません。

強酸化剤、強アルカリ剤、金属は混色危険物質なので接触を避け、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラスなどで保管します。

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