CoaXPressカメラ

監修:ジャパンボーピクセル株式会社

CoaXPressカメラとは

CoaXPressカメラとは、75Ωの同軸ケーブルを使用する、マシンビジョン用途の高速画像転送用に開発されたデジタルインターフェースを採用したカメラのことです。

カメラとフレームグラバー間において大量のデータを高速かつ長距離に転送できるインターフェース規格で、国際展示会であるVISION 2008で発表され、2010年12月にリリースされました。2019年にはCoaXPress 2.0がリリースされ、産業用画像処理業界に広まっています。CoaXPress 1.0/1.1は1本あたりの最大転送速度が6.25Gbpsなのに対し、CoaXPress 2.0では2倍の12.5Gbpsまで向上しており、産業用画像処理規格において屈指の速度となっております。

CoaXPressカメラの使用用途

CoaXPressカメラは、転送速度が優れていることに加え、ケーブル長が長く、電源供給・データの制御・通信がケーブル1本に統合されているなどの多くのメリットもあることから、高度な画像処理が必要な用途に用いられています。主には半導体業界の検査用途を中心に、食品検査、医用イメージング、印刷検査、高度交通システム(ITS)など、高速性・低レイテンシー(遅延)を必要とする分野で幅広く活躍しています。

プラグ・アンド・プレイに対応し、GenIcam規格に準拠しているので、アプリケーション開発やGigE, USB3Visionといった他インターフェースからのアップグレードも簡素化します。また、CoaXPress(CXP)ケーブルはCameraLinkケーブルよりもコストメリットに優れ、1枚のグラバーボードに対してより多くのカメラを接続できる為、グラバーボードやケーブル数を削減し、複数台のカメラが必要な要件にも柔軟に対応することが可能です。

他の産業用画像処理規格と比較してもデータ転送速度が突出しており、リアルタイムで高解像度の画像データを転送できる為、最新のCMOSセンサの能力を最大限に引き出すことが可能です。接続が容易で長距離通信にも対応し、高度な制御で同期も正確な為、今後さらに普及することが見込めます。

CoaXPressカメラの原理

CoaXPressカメラでは、1本の同軸ケーブルでフレームグラバーへ最大12.5Gbps/sのデータを転送し、トリガ信号などフレームグラバーからカメラへの制御信号は最大41.8Mbits/sで、また13Wの電源供給を実現しています。より多くのデータ転送を必要とする場合はリングアグリケーションによって転送帯域を増やすことが可能な為、4本のCXP-12リンクを使用することで最大50Gbps(12.5 x4)も用意に達成します。

CoaXPressカメラの構造

CoaXPressカメラは1本の同軸ケーブルによってフレームグラバーと接続が可能ですが、複数ケーブルを接続することでさらなる広帯域化にも対応します。カメラ・ケーブル・フレームグラバーボードといったCoaXPressに準拠する製品には、対応する速度によって以下のラベル表示がされます。

CXPラベル 転送速度 ケーブル長
CXP-1 1.25Gbps 120m
CXP-2 2.5Gbps 110m
CXP-3 3.125Gbps 85m
CXP-5 5.0Gbps 60m
CXP-6 6.25Gbps 35m
CXP-10 10.0Gbps 25m
CXP-12 12.5Gbps 25m

ケーブルは規格に準拠したCXPケーブルを使用し、転送速度によって最大ケーブル長が変わります。なお、実際のケーブル長に関してはケーブルの種類や品質・接続構成に依存しますが、一般的には、より太いCXPケーブルを使用することでより長いケーブル長を確保することが可能とされています。

接続コネクタは、6.25Gbpsまでの場合はDINコネクタ、12.5Gbpsまでの場合は小型のMicro-BNCや、広く使用されているBNCが対応します。

CoaXPressカメラの選び方

CoaXPressの他に一般的なインターフェース規格であるCameraLink、GigE、USB3Visionと比較すると、多くの点で異なります。

• CameraLink

2000年にリリースされて以降、産業用画像処理業界において長い実績を誇り、カメラとフレームグラバー間におけるリアルタイム制御や安定接続で高い信頼性のある規格です。

• GigE Vison

2006年5月にリリースされたEthernet通信規格(IEEE802.3)を用いた規格です。非常に長い距離でのデータ転送が可能で、汎用性が高く、マシンビジョンカメラでも多く採用されています。

• USB3 Vision

2013年1月にリリースされ、プラグ・アンド・プレイや高い機能性で広く知られているUSBの規格化により、産業用画像処理向けのインターフェースとして人気も高く、広く普及しました。

大きく異なる点として、GigE VisionやUSB3 Visionではフレームグラバーなどのハードウェアが不要で汎用性の高さがある反面、CoaXPressにはデータ送受信の際に規格に対応したハードウェアが必要となり、トータルコストへの影響が懸念されます。ただし、ハードウェアを介することによるCPUへの安定性や、高速化・高解像度化における高い転送帯域への対応など、CoaXPressの性能が必要な場合は特に問題になりません。同様の接続構成であるCameraLinkと比較しても、ケーブルコストに優れており、高い転送性能によってケーブル本数やグラバーボードの削減が可能です。

さらにCameraLink・USB3 Visionよりもはるかに長いケーブル長が確保可能で、複数接続に対応したグラバーボードなど様々な選択肢が増えており、カメラを多台数使用する際にもシステムコスト低減につながります。

本記事はCoaXPressカメラを製造・販売するジャパンボーピクセル株式会社様に監修を頂きました。

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