フックレンチとは
図1. フックレンチ
フックレンチとは、名前の通り先端が半円形のフックのような形状になっているレンチです。
ほかにも「引っ掛けスパナ」「フックスパナ」「ピンスパナ」「リングスパナ」「ロックリングまわし」「S形ヘッドまわし」「車高調レンチ」「スロッテッドナットレンチ」など、多くの名称があります。
フックレンチの使用用途
フックレンチは、溝のある特殊なナットを締めたり緩めたりする際に使用します。溝のある特殊なナットは「溝付き丸ナット」「軸受用ナット」「ベアリングナット」「ロックシート」「スプリングシート」「ロックリング」「ロックナット」「ステムナット」「スロッテッドナット」「キャッスルナット」など名称はさまざまです。
主に自動車やバイク、自転車などのメンテナンスで使用されます。車高やサスペンション、ステアリング、シートなどの調整に欠かせない専用工具です。
フックレンチの原理
図2. フックレンチの引っ掛けと固定
フックレンチはナットの溝にフックの先端を引っ掛けるとともに、アゴの部分でナットをしっかり固定するため、トルクをかけて締めたり緩めたりできます。引っ掛けて固定ができないと力を入れられないため、フックレンチはサイズ選びが重要です。
フックレンチがない場合、ウォーターポンププライヤーなどでつかんだり、溝にマイナスドライバーを当てて後ろからハンマーで叩いたりすることも可能です。しかし、十分なトルクをかけられないほか、ナットを傷つけてしまうため、できるかぎりフックレンチを使うことをおすすめします。
フックレンチの選び方
フックレンチを選ぶ際に気をつけるポイントは、以下の5点です。
1. サイズ
図3. ナットのサイズは最大外径で測る
フックレンチはサイズが合っていないと、ナットの溝に引っ掛けて固定ができないため使えません。購入する場合は、ナットのサイズを測ることをおすすめします。ナットのサイズは内径 (溝の内側) ではなく、最大外径のため注意が必要です。
サイズは「25〜30mm」「30〜38mm」などと、範囲が指定されています。範囲内のナットであれば作業が可能です。
2. 一般タイプとアジャストタイプ
フックレンチには「一般タイプ」と「アジャストタイプ」の2種類があります。
一般タイプ
一般タイプはシンプルな作りのため、使い勝手が良く壊れにくいです。作業するナットのサイズがまちまちな場合は、サイズごとにフックレンチを準備する必要があります。
アジャストタイプ
アジャストタイプは、サイズ調整が可能なフックレンチです。「調整式フックレンチ」「自在フックレンチ」「アジャスタブルフックレンチ」などと呼ばれています。サイズ調整はスライド式やウォームギア式、開閉式などさまざまです。
「25〜70mm」「35〜105mm」など適用範囲が広く、1本あればほとんどのナットをカバーできるため便利です。しかし、一般タイプとは異なり、可動部分があるため、大きな力がかかりすぎると壊れる可能性があります。
3. フックタイプと丸ピンタイプ
フックレンチは、先端 (爪) の形状が「フックタイプ」のものと「丸ピンタイプ」のものがあります。一般的に溝がついているナットが多いため、フックタイプがあれば問題ありません。
中には溝ではなく丸穴になっているナットもあるため、その場合は丸ピンタイプのフックレンチが必要です。
4. フックレンチの厚み
フックレンチの厚みにも注意が必要です。安価で薄っぺらいものは、使っていくうちに曲がってしまう可能性があります。
特にナットは固着していることも多いため、大きなトルクをかけても曲がらない頑丈なものが良いです。耐久性のあるものは高価になりますが、曲がって買い直す可能性が低いため、長期的にみれば経済的です。
また、厚みのあるほうが握りやすく、力も入れやすいです。
5. トルクレンチ用の差し込み角
フックレンチには、トルクレンチ用の差し込み角 (四角い穴) がついているものもあります。トルク管理が必要な場合は、差し込み角のあるフックレンチが最適です。
トルクレンチだけでなく、スピンナーハンドル (長いハンドル) も装着できるため、固着したナットを緩めたい場合にも便利です。