溶接マスクとは
溶接マスクとは、アーク溶接などの閃光や火花から目や顔を守るお面状の保護具です。
アーク溶接の閃光は、直視すると目が火傷してしまい、最悪の場合は失明にいたることもあります。溶接マスクは、主にかぶり面と手持ち面の2種類があります。
かぶり面は両手が使える反面、脱着しづらいです。手持ち面はすぐに外せて溶接後の状態を確認しやすいですが、片手がふさがるというデメリットがあります。
溶接マスクの使用用途
溶接マスクは、溶接時に必ず使用しなければならない保護具です。アーク溶接のアークには、目に見える可視光線だけでなく、目に見えない有害な紫外線や赤外線も含まれています。
アークの閃光を直接見てしまうと、青光障害と呼ばれる網膜障害を引き起こし、視力が悪くなったり、視野の一部分が見えなくなったりします。症状は数週間から数ヶ月で回復する場合もあれば、そのまま残る場合もあるため、溶接マスクは必須です。
また、有害な紫外線により角膜炎や結膜炎 (紫外眼炎) 、皮膚炎なども引き起こされます。溶接で引き起こされる紫外眼炎は、電気性眼炎とも呼ばれ、眼が痛くなったり、ゴロゴロしたり、涙が止まらなかったり、まぶしくなったりします。通常、症状は数時間後にあらわれて、1日程度で消えることが多いです。
溶接マスクの原理
1. かぶり面タイプ
かぶり面タイプは、頭から被るものや、固定バンドで頭に括り付けるタイプなどがあります。被りっぱなしになるため、肉眼での確認はしづらいですが、顔をすっぽり覆うので安全性は高いです。また、両手が空くので作業性が向上します。
2. 手持ち面タイプ
手持ち面タイプは、片手に持って顔に被せます。あまり顔から離しすぎると紫外線が目に入ったり、溶接マスクとの隙間から火花やスパッタが入り込んで、顔に付着してしまったりする可能性があるため注意が必要です。ある程度、溶接棒を近づけてから溶接マスクを被ると狙いが定まりやすくなります。
溶接マスクの選び方
溶接マスクの選ぶ際は、以下の点を考慮します。
1. タイプ
溶接マスクのタイプは、作業内容や作業者の溶接スキルを考慮したうえで選びます。手持ち面は、溶接後の確認が行いやすいです。しかし、片手を溶接マスクで使用しているため作業性が悪く、そのぶん危険性が高くなります。
このタイプを使用するには、溶接作業の練習が必要不可欠です。反対にかぶり面は、安全性と作業性には優れていますが、視認性の悪さがデメリットとして挙げられます。
溶接の状態を目視で確認する場合、溶接マスクを外して見なければならないため効率が悪くなります。
2. 自動遮光の有無
手持ち面の視認性の良さと、かぶり面の安全性と作業性の高さを兼ね備えているのが、自動遮光の溶接マスクです。自動遮光の溶接マスクは、普段は遮光されていませんが、アークの閃光を感知すると自動的に遮光してくれます。
遮光時の暗さを手動で調整できる製品もあり、さらに作業性が高まります。また、液晶を使って遮光するため電源が必要です。
電池タイプとソーラーパネルタイプがあります。電池交換の手間やコストを減らしたい場合は、ソーラーパネルを選ぶと良いです。
3. 遮光度
サングラスに濃度があるように、溶接マスクにも遮光度があります。遮光度は、JISによって遮光保護具の仕様標準が定められています。
例えば、被覆アーク溶接で電流値が30A以下ならば遮光度番号5または6、400A以上ならば遮光度番号14です。ガスシールドアーク溶接で100A以下ならば、遮光度番号9または10、500A以上ならば遮光度番号15または16です。
遮光度番号が大きいほど、遮光度が高くなります。そのため、低電流の溶接に遮光度の高いものを使うと、暗くなりすぎて作業しづらくなります。溶接電流値に応じて、適切な遮光度を選定することが重要です。
4. 軽さ
溶接マスクは手持ち面にしろ、かぶり面にしろ軽いほうが使い勝手が良いです。とくに長時間の作業では疲労にも影響を及ぼすため、軽さも選ぶ際のポイントになります。